産業春秋/足元の再エネを眠らすな

(2022/7/26 05:00)

地中熱の利用に関心が高まっている。環境関連の展示会はシステムを紹介したブースがにぎわいをみせる。冷暖房費を削減しながら二酸化炭素の排出抑制に貢献できる。地中熱にようやく追い風が吹き始めた。

地下は10メートルから深部になると年間を通じて温度に大きな変化はない。地中熱利用は、この熱エネルギーをヒートポンプで必要な温度領域に変換し、住宅や事業所の冷暖房や給湯などに利用する。

欧米では石油ショックを契機に1980年代から普及が進んだ。首位の米国では100万件以上の導入実績がある。日本は2010年のエネルギー基本計画に書き込まれるまで、国の政策として認知されずにきた。

電子部品製造のファインネクス(富山県舟橋村)は、上条工場(富山市)と本社工場で地中熱を利用している。電気代に換算すると導入前に比べ2-3割の削減になり、最近は工場見学の依頼も来る。

導入費を補助する制度はあるが、利用は住宅や公共施設が主体だ。工場は初期投資と投資回収がネックになり、導入件数はわずかだ。50年の脱炭素社会の実現はクリーンエネルギーの総力戦になる。足元にある再生可能エネルギーを眠らせておくのは実にもったいない。

(2022/7/26 05:00)

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