産業春秋／まだ大丈夫はもう危ない

周囲で新型コロナ感染者が続出する。全国の新規感染者が２０万人を超える日もあるのだから不思議はない。子どもから家族への感染が多発し、在宅勤務も危うくなってきた。

子どもにうつされたという知人から悲痛なメールが届いた。「ワクチンを３回接種しているため軽症で済むと思ったら発熱に頭痛、喉や関節の痛み…。重症化しないかと不安になった」。

新規感染者が毎週倍増を続け過去最多を更新しても政府は行動制限に慎重姿勢を崩さない。オミクロン変異株「ＢＡ．５」の感染力は強力だ。社会経済活動との両立は大事だが、感染が高齢者に広がってからでは手遅れになる。

オミクロン株は重症化しにくいと言われながら前回の第６波では１日当たりの死者数が過去最多になった。その過ちを繰り返せば政治が経済を回すためにある程度の犠牲を許容したことにならないか。

これ以上、社会経済活動は停滞させられない。人間社会を見透かしたかのようなコロナの生存戦略には舌を巻く。網羅的な行動制限ではなく、高齢者や基礎疾患者を守り、子どもの感染抑制に的を絞った対策に知恵を注ぐべきだ。「まだ大丈夫はもう危ない」という危機管理の基本をおろそかにせず。