(2022/8/3 05:00)
中央最低賃金審議会(厚労相の諮問機関)は、2022年度の最低賃金の目安を全国平均で前年度比3・3%上昇の時給961円に決めた。金額、伸び率とも過去最大を更新した。最低賃金の影響を受けやすい非正規雇用者は雇用者全体の4割弱を占める。物価高騰に対応した意欲的な引き上げと評価したい。
ただ短期・中長期の二つの視点で残された課題は多い。一つひとつ丁寧に解消していかなければ賃上げは定着しない。
短期的には、コロナ禍の影響を受ける飲食・宿泊業など、経営環境が厳しい中小企業の事業継続・雇用確保に向けた適切な政府支援が求められる。賃上げを実施しても、雇用が守られなければ元も子もない。また賃上げ原資を確保するため、仕入れ価格の上昇分を取引価格に転嫁する価格転嫁を推進する必要がある。中小企業庁によると、価格転嫁が全くできていない下請け企業は2割強、1―3割の一部転嫁にとどまる下請けも2割強と合わせて45%に達する。取引適正化を徹底し、中小企業の収益改善を急ぎたい。
最低賃金は外国人労働者にも適用される。不当な低賃金はしばしば国際的にも批判されており、改善を求めたい。
中長期的な視点では、中小企業が自発的に賃上げできる環境を整備することが重要だ。デジタル変革(DX)の推進により生産性を向上させつつ、付加価値の高い製品・サービスの開発も政府が後押しすることが求められる。また同一労働同一賃金の徹底はもとより、短時間正社員制度や勤務地限定正社員制度など多様な正社員制度の導入を拡大し、柔軟な働き方も推進することが求められる。DXや多様な働き方を推進することで、地域間の賃金格差を是正し、主要国に見劣りする最低賃金の底上げにつなげたい。
日本商工会議所によると、22年度の最低賃金について41・7%の企業が「引き上げるべき」と回答している。人手不足・人材定着という切実な悩みが背景にある。中小企業が抱える抜本的な課題を中長期で解消しなければ、賃上げは定着しない。
(2022/8/3 05:00)
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