(2022/8/17 05:00)
政府は追加の物価高対策を9月上旬にまとめる。高原状態にある食料品・エネルギー価格に焦点を絞った対策で、企業・家計の負担が軽減される内容に仕上げてほしい。一方、中小企業の価格転嫁は進展の兆しはあるが、大企業との取引適正化に課題を残す。是正を急ぎたい。
政府は15日に「物価・賃金・生活総合対策本部」の会合を開き、岸田文雄首相が物価高対策を具体化するよう指示した。政府による輸入小麦の業者への売り渡し価格を10月以降も据え置くほか、9月末に期限を迎えるガソリン価格の抑制策(補助制度)も10月以降に延長することを検討する。また生活困窮者対策となる地方創生臨時交付金の増額や、中小企業による不十分な価格転嫁の是正も検討する。
長引くウクライナ情勢と円安基調を背景に、7月の国内企業物価指数は前年同月比で8・6%上昇している。消費者物価指数(生鮮食品を除く)も6月に同2・2%上昇と、消費増税の影響を除けば13年9カ月ぶりの高水準にある。原油、銅、小麦などの国際商品市況は、欧米の金融引き締めに伴う需要鈍化の見通しから下落傾向にあるが、円安基調を要因とした輸入物価は高水準を維持している。
繰り返される物価高対策の延長は対処療法ながら、家計の負担を軽減することで節約志向の動きが見られる消費の喚起につなげたい。他方、どの状況で対策を打ち止めるのか、“出口戦略”の政府基準も示すことが財政規律の観点から求められる。
懸案である中小企業の価格転嫁に大きな改善が見られない。2割の下請け企業が全く価格転嫁できていない。発注企業が下請け企業との取引適正化を宣言する「パートナーシップ構築宣言」の登録企業1万2200社超(8月5日時点)のうち、大企業(資本金3億円超)は820社程度にとどまるという。
経済産業省・中小企業庁は大企業の参加を促すほか、評価がかんばしくない発注企業に対し所管大臣名で指導・助言するなど取引適正化を推進する。円滑な価格転嫁を実現し、中小企業の賃上げ余力を確保したい。
(2022/8/17 05:00)