社説/感染「全数把握」見直し 医療逼迫解消し経済と両立を

(2022/8/18 05:00)

政府は新型コロナウイルス感染者の全数把握を見直す検討に入った。月内にも具体案をまとめる。逼迫(ひっぱく)する医療機関や保健所の業務負担を軽減し、高水準で推移する感染者への現場対応力を強化するものと評価したい。感染状況やウイルスの変異などを見極めつつ、迅速な対応を求めたい。

新規感染者数が高水準で推移する「第7波」では、軽症・中等症の患者が医療機関に殺到し、重症化リスクの高い高齢者を十分に治療できない事態が懸念されている。1日当たりの死者数は「第6波」のピーク並みに達し、一刻の猶予もない。

感染症法で「2類相当」に位置付ける新型コロナの場合、医師は診断した感染者全員を保健所に届け出る必要があり、診療時間が制約される。保健所は医師の報告をその都度確認して入院調整する役割を担い、高齢者などの健康観察に十分に目配りできない事態も起きている。

政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長らは、季節性インフルエンザ並みの「5類」への移行と、移行に伴う全数把握の段階的な中止などを政府に提言している。また医師の業務負担の軽減だけでは増え続ける発熱外来に対応できないため、発熱者を一般外来でも診察できるよう要望。抗原検査キットを確実に入手できる体制の整備も求めている。

政府は全数把握の見直しについて、特定の医療機関で感染状況を把握する定点調査などを想定している。また「5類」に移行すると医療費に自己負担が発生するため、費用については政府の慎重な審議が求められる。

政府がコロナ禍対応でようやく重い腰を上げた。コロナ禍が比較的落ち着いていた今春には政府の対策分科会は開かれず、濃厚接触者の待機期間の短縮を決めた程度だった。参院選後の臨時国会もわずか3日間しか開かれず、賛否が分かれるコロナ禍対応の議論を回避。政府の消極姿勢により医療機関の逼迫が深刻化したと言える。コロナ禍と社会経済活動をいかに両立させるか、政府には今度こそ確かな道筋を示してもらいたい。

(2022/8/18 05:00)

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