(2022/8/23 05:00)
鉄鋼大手は脱炭素に向け、生産時の二酸化炭素(CO2)排出量が少ないと“見なされる”鋼材を供給する意向だ。どういった鋼材が環境に優しいのか、政府および業界は低CO2とする根拠や第三者認証に関する基準づくりを進めてほしい。
神戸製鋼所は今春、国内競合に先駆けて低CO2の高炉鋼材を商品化し、トヨタ自動車の競技車両のサスペンション部品に採用されて話題となった。日本製鉄はCO2排出が少ない電気炉で製造する高級鋼を“カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)スチール”として2023年度に発売する。JFEスチールは仙台製造所(仙台市宮城野区)の電炉設備増強と不純物の影響を抑える技術の開発により、低CO2鋼材の投入を準備する。
各社の投入表明は欧州勢からやや出遅れたが、日鉄は「電炉での電磁鋼板生産は初」と自信をみせる。顧客である自動車や電機メーカーなどはESG(環境・社会・企業統治)経営に取り組んでおり、低CO2鋼材に関心を寄せるのは当然だ。
脱炭素技術の開発が道半ばにあって、注目されるのはこれら商品をどう評価するかだ。各社はマスバランス方式を採用し、鋼材の製造過程で発生したCO2削減効果を一部商品に割り付け、同商品を“グリーン鋼材”と見なして第三者認証を得る方針だ。欧州勢と同手法で環境負荷の低さを定義したいという。
日鉄は同方式を「競争力強化に努める顧客のニーズに早期に応えられる」とし、「厳格にCO2排出量を製品にひも付けると相当時間がかかる」とする。
鉄鋼業界は国際競争の渦中にあり、まず商品化に動くこと自体は評価したい。だが当面は現実的な手法で低CO2鋼材とみなしても、今後、電炉企業を含め商品を本格展開するには業界団体などでの“共通基準”の整備も必要になる。環境にやさしい鋼材とはいえ色や形、材質では従来商品と何ら変わらない。「計算式上のCO2低減商品に過ぎない」と言われないよう、CO2削減に向けた技術開発と同時に基準づくりも進めたい。
(2022/8/23 05:00)
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