(2022/10/28 00:00)
(株)マグネスケール(神奈川県伊勢原市)が、マニュアル計測機器市場に再参入する。デジタルマイクロメータのベストセラー「M-30(ミューメイト)」の発売から約40年。革新的なセンシングデバイスとして2023年1月に投入するのが「μMATE+(ミューメイトプラス)」である。高精度・高分解能のデジタルレバーゲージとデジタルインジケータゲージを揃え、無線通信や測定データ管理など生産性を向上させる新機能を付加。液晶パネルでのメーター針の表示などアナログ機の長所も取り入れ作業者の使い勝手を重視した仕様となっている。品質保証への関心が高まる中、計測の高度化と効率化に最適なツールとなりそうだ。
マグネスケールがデジタルゲージ市場の開拓を目的に計測システム事業部を設立したのが2018年。事業部長として陣頭指揮を執る満田寿執行役員は「近年力を入れてきた自動測定分野に加え、需要の大きいマニュアル計測機器の商品投入が今後のビジネス拡大に不可欠」と判断。既存の商品を検証し、マニュアル計測機器に求められる機能を追求する中で完成したのがμMATE+である。
無線通信によるデータ管理と専用アプリ
μMATE+はデジタルインジケータ「LU20」に接続するデジタルレバーゲージ「DM10-01(測長範囲1mm、分解能0.1μm)、DM10-02(測長範囲2mm、分解能0.2μm)」とデジタルインジケータ一体型のデジタルインジケータゲージ「DU10-12(測長範囲12mm、分解能0.1μm)、DU10-30(測長範囲30mm、分解能0.5μm)」の2機種4タイプ。価格は9万~10万円。
それぞれBluetoothでデータ送信できる通信機能を備え、専用アプリがなくても端末側本体の任意のソフトウェアにテキスト形式での入力が可能。また、専用アプリとして無料でダウンロードできるMobileキーボードアプリ(特許出願中)、Mobile専用計測アプリ、Windows専用計測アプリを用意している。たとえばMobileキーボードアプリはiPad、iPhoneの入力キーボードに測定値を表示。選択したソフトウェアにテキスト形式で入力でき、メモ帳やメールなどのアプリにも測定値を保存できる。
満田執行役員は「アプリを使って経験の浅い若手でも手軽にデータ管理できるのがポイント。製造現場でのIoT化が進む中、無線を使ったデータ管理はマニュアル計測機器に最も求められる機能の1つです」と無線機能の重要性を強調する。
アブソリュートを実現する2つのコア技術
さらにμMATE+でこだわったのが工作機械のスケールなどで実績のあるアブソリュート(絶対位置)検出の実現であった。開発を担当した同部システムソリューション課の松田豊彦課長は「従来のてこ式ゲージの機構面での改良と磁気センサに代わる小型で省エネ性に優れたセンサの開発が最大の課題でした」と振り返る。こうして生み出されたのが検出機構「ALリンク機構」(Arc-to-Linear Conversion link mechanism、特許出願中)と位置検出センサ「IDセンサ」(Inductance to Digital conversion sensor)の2つのコア技術である。
ALリンク機構は、円弧運動を直線運動に変換する可動機構のため従来のてこ式ゲージのような回転ギヤ式で生じるバックラッシュを解消し、戻り誤差の低減に成功。繰り返し精度も0.5μmを実現できる。
一方、IDセンサは、ターゲット(金属シリンダ)の移動量に応じたインダクタンスの変化をアブソリュート値として検出する仕組みだ。絶対位置検出を省電力でシンプルな方法で実現している。
表示部分には視認性の良い2.7インチの液晶ディスプレイを使用しており、測定子の動きをビジュアルに把握でき、オーバーレンジなどの確認が容易となる。モバイルで課題となる省エネ性も液晶パネルの最適化や、新規センサの採用によって解消し、実使用80時間を達成した。
デジタル技術で活かす職人の技
液晶パネルの画面は5種類の表示モード切り替えができ、針の動きを再現したアナログ表示画面では従来のレバーゲージやダイヤルゲージの使用感で測定できる。「針の振れ幅を見る作業者の感覚を尊重し、デジタル技術でそのスキルを活かすことを狙いました」(満田執行役員)と長年培われてきた技術へのリスペクトがそこには表れている。
DMG森精機グループで販売するTULIPと連携
すでに第1弾として親会社であるDMG森精機(株)の伊賀工場への導入が決定した。DMG森精機が進めるマニュアル計測機器のデジタル化、無線化、測定値と測定器の一元管理にμMATE+を採用し、今後、全社的に展開していく方針。また、DMG森精機グループの(株)T Projectが販売する製造支援アプリケーション作成プラットフォーム「TULIP」(※)とμMATE+との連携も進めており、今年9月に米国イリノイ州シカゴで開かれた国際製造技術展(I M T S)では、TULIPと連動し、リアルモニタリングのデモを行うなどグループ連携にも力を入れる。
マグネスケールは11月8~13日に東京ビッグサイト(東京都江東区)で開かれる第31回日本国際工作機械見本市(JIMTOF2022)に出展。サンプル展示し、23年1月からは評価サンプルの出荷も行う。「品質保証の観点からマニュアル計測機器のニーズは高く、一般金属加工や部品メーカーでの需要を見込んでいます」(松田課長)と期待を寄せる。初年度5000台、数年後には年間5万台に引き上げる計画だ。
※TULIPは米国Tulip Interfaces, Inc.が開発し、日本国内ではDMG森精機グループの株式会社T Projectが販売・サポートを行っている。
(2022/10/28 00:00)