社説/英国、週内に新首相決定 内政の安定化と経済の軟着陸を

(2022/10/24 05:00)

トラス英首相が辞任を表明し、新首相となる保守党党首が28日までに選出される。新首相は国内政治の安定と同時に、歴史的な物価上昇と景気後退からの脱却が喫緊の課題となる。英領北アイルランドの国境管理をめぐって冷え込んだ欧州連合(EU)との関係も改善したい。西側諸国による安全保障の結束を維持・強化する上でも、新首相には政治経済が軟着陸する施策を慎重に講じてもらいたい。

トラス首相は通貨ポンドと英国債の急落など、金融市場を混乱させた責任をとる形で、就任からわずか44日で辞任表明に追い込まれた。景気浮揚に向け、法人増税の凍結や所得税引き下げなどを打ち出したが、金融市場は財源が不透明な年450億ポンド(約7・6兆円)の減税策ではむしろインフレが進み、政府債務が膨張すると受け止めた。

英国の10月の消費者物価指数は前年同月比で10・1%も上昇し、40年ぶりの高水準にある。資源価格の高騰に加え、EU離脱に伴う東欧からの移民制限により、人件費の高騰と物価上昇を招いている。インフレ抑制よりインフレを助長する景気対策を優先した施策に、同盟国のバイデン米大統領も「間違いだった」と批判する異例の事態に発展していた。主要閣僚2人が退くなど内政も迷走しており、トラス首相の辞任はやむを得えなかったと言える。

英国はEU離脱を問う国民投票から6年で4人の首相が退任することになり、内政はそもそも安定していない。EU離脱により英国社会は分断し、英国とEUの関係も悪化した。中でも英国は、英領北アイルランドとEUに加盟するアイルランドの国境管理を英国有利に修正しようと動き、EUから外交の信用を問われている。英国の新首相は、安全保障の観点からもEUとの関係を修復し、結束の強化に努めてもらいたい。

英国はインド太平洋への関与を強める「グローバル・ブリテン」を掲げ、環太平洋連携協定(TPP)加盟を申請している。新首相は金融市場やEUとの信頼関係を深めつつ、新たな貿易圏も経済再生につなげたい。

(2022/10/24 05:00)

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