(2022/12/22 05:00)
防衛力強化だけでなく、平和外交も積極化したい。
政府は安全保障にかかわる戦略3文書を改定した。従来の「防衛計画の大綱」に代えて「国家防衛戦略」を策定。防衛経費・装備品の数量を示した「中期防衛力整備計画」は、10年間程度を念頭にした「防衛力整備計画」に改めた。
最も重要な「国家安全保障戦略」は2013年以来、9年ぶりの改定。現在の情勢を「戦後、最も厳しく複雑な安全保障環境」として、経済安保・技術・情報などを含む国の横断的な対応が必要だと評価する。
具体的には「安全保障の環境と課題」として中国、北朝鮮、ロシアの3カ国の動向を分析し対応方針を示した。ロシアによるウクライナ侵略が長期化する中で、わが国の安全保障環境だけが平穏無事と考えるのは楽観に過ぎる。政府が備えを固めるのは理解できる。
また防衛力整備計画では、23―27年度の5カ年の防衛力整備のための歳出総額を43兆円と規定。人件・糧食費を除く装備品に27兆円を充当する。遠隔の敵基地などを攻撃するスタンドオフ防衛能力に5兆円、宇宙・サイバーなどの領域横断作戦能力に8兆円を計上。いずれも従来の予算の数倍規模だ。
さらに次期戦闘機の研究開発や、これまで後回しにしてきた弾薬の増備や重要施設の耐震化・移転集約にも相当な額を計上している。自衛隊が、これまでかなり背伸びをして装備を整えてきたことを感じさせる。
産業界では政府の経済安保法制を歓迎している。防衛費の増大が法人増税につながるのは悩ましい問題だが、表だった反対の声は少ない。平和と安全が経済の基盤であり、同時に直近の東アジアの安全保障環境が容易ならぬことも広く理解されているといえよう。
しかし硬質な対応だけが安全保障のすべてではないことも強調しておきたい。防衛力強化は「日本への武力攻撃が割に合わないことを相手に実感させる目的」(防衛省幹部)だ。その上で、外交による平和の維持を、国民も産業界も望んでいる。
(2022/12/22 05:00)
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