社説/来年度1.5%成長見通し 賃上げ進め、内需主導の成長を

(2022/12/23 05:00)

政府は22日、2023年度の実質成長率を1・5%程度とした見通しを閣議了解した。この見通しを前提に、23年度の税収は4年連続で過去最高を更新すると見立てる。総合経済対策の効果と企業の賃上げが景気を支え、個人消費と設備投資が堅調に推移することが期待される。岸田文雄政権が目指す賃上げ率3%超を実現し、個人消費を起点に経済の好循環を回したい。

政府は23年度の実質国内総生産(GDP)を前年度比1・5%増の558兆円と、コロナ禍の18年度(554兆円)を上回って過去最高を更新すると見通す。民間シンクタンクの予測は1・0%成長が多く、1・3%や1・5%成長も散見される。政府見通しはやや楽観的だが、確実な賃上げで実質賃金を増加に転じさせ、政府見通しに近い成長率の達成を目指したい。

厚生労働省の調査によると、物価変動の影響を勘案した10月の実質賃金は前年同月比2・9%減と7カ月連続で減少し、賃上げが物価上昇に追い付いていない。10月の消費者物価指数(生鮮食品を除く)は前年同月比3・6%上昇と、40年8カ月ぶりの高い上昇率を示していた。

経団連の十倉雅和会長は23年春闘について、22年実績を「超えなければならない」と語り、連合は5%以上の高い春闘要求方針を決めている。日銀の黒田東彦総裁は23年の消費者物価指数の上昇率が2%を割り込むと見通しており、岸田首相が求める3%超の賃上げが実現すれば実質賃金は増加に転じる。

米国の利上げ幅縮小に続き、日銀が長期金利の上昇を容認したことで円安が一服している。輸入物価が抑制され、景気にプラスに作用することにも期待したい。他方、下請け企業が物価上昇分を親企業に価格転嫁できる取引適正化を推進し、賃上げ余力を高めることも肝要だ。

23年の世界経済は長引くウクライナ情勢を背景に歴史的なインフレに直面し、減速から後退への局面変化が懸念される。日本は内需主導の成長を目指す必要がある。産業界で機運が高まっている賃上げの流れを加速し、堅調な成長を目指したい。

(2022/12/23 05:00)

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