(2022/12/26 05:00)
他の政策にしわ寄せが及ばぬよう、財源確保が重要だ。
政府の2023年度予算案は一般会計の総額が114兆3812億円と、前年度当初予算比6・3%の大幅増となった。予算の増額は11年連続になる。
ただ歳入面では税収増とその他収入の増加を見込んで国債発行を抑制し、公債依存度を22年度の34・3%から31・1%に引き下げてはいた。
一般歳出の増加の主役は、前年度までの社会保障関係費から防衛関係費に転換した。社会保障の増加額が6154億円だったのに対し、防衛費は1兆4192億円もの増額だ。さらに「防衛力強化資金」という新たな制度を設け、3兆3806億円をプールする。この資金は24年度以降の防衛費増に振り向ける予定としている。
自衛隊の強化に関する岸田文雄政権の意志は明確で、国民も一定に理解している。ようやく、その財源確保をどうするかが明らかになった。
「防衛力強化資金」は特別会計からの繰入金、コロナ禍対策予算の不使用分、国有財産の売却益、決算剰余金、歳出削減を主体に確保。それでも不足する年間1兆円を増税で賄い、現行の防衛費5・2兆円を27年度に8・9兆円程度に引き上げる。
増税を圧縮したように見える。しかし特別会計からの繰り入れや決算剰余金は景気対策などの補正予算の財源であり、一部は国債償還に充当して財政再建に寄与してきた。
これらの使途が防衛費に限定されることは、国の財政自由度の低下を意味する。歳出削減も「従来より相当の努力をしないと(防衛費が)確保できない」(財務省幹部)という。今後、社会保障と防衛以外の政策にしわ寄せが及ぶ懸念がある。
さらに防衛費の一部を新たに建設国債で賄うことにしたことも、長期的に財政の悪化につながろう。
経済安全保障に関わる新政策や脱炭素・エネルギー対策など、産業社会を維持・発展させていくには相応の予算が必要だ。景気浮揚による税収増など財源確保に努めてもらいたい。
(2022/12/26 05:00)
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