(2023/1/6 05:00)
日本が経済・外交でも世界の分断回避をリードしたい。
近年の東アジアの安全保障環境について、政府は「戦後、最も厳しく複雑」と分析する。このため防衛力を大幅に強化すると同時に経済安全保障など各種の施策を動員。武力の暴発や紛争を防ごうとしている。
2022年はロシアによるウクライナ侵攻という、少し前までは考えられなかった事態が現実化し、ウクライナの住民生活は今なお破壊されている。こうした厳しい現実の前に、政府の安全保障政策は国民の理解を得ていると言えよう。
産業界は伝統的に外交に関して積極的に要望をしない。しかし通商であれ対外直接投資であれ、相手地域の安全と日本との良好な関係がなければ成り立たない。東アジアの国・地域間で緊張が高まることを産業界は望まない。防衛一辺倒でなく、周辺国との経済関係の強化も押し進めるべきだ。
政府は安全保障の方針を定めた戦略3文書に続き、経済協力の基本方針である「開発協力大綱」改定作業を進めている。22年12月には経団連が改定に向けた意見を提言した。
それによると、経団連は気候変動や感染症など地球規模課題の深刻化を懸念。これらの解決に向け、ソサエティー5・0を活用した「人間中心の社会」を共創する必要性を強調した。
より具体的には、ピーク時の半分に落ち込んでいる政府開発援助(ODA)を増額し、開発協力を外交の重要なツールとして活用すべきとしている。また日本企業が特定国に依存しないサブライチェーン(供給網)を広げることも、世界の分断回避に貢献できるという。緊張の強まる東アジアの中にあって、わが国がこうした平和外交を展開することは大いに意味がある。
5月に広島で先進7カ国首脳会議(G7サミット)が開かれる。議長国の日本が国際世論をリードし、世界平和に貢献するまたとないチャンスである。周辺国との対立やあつれきを問題視するだけでなく、経済力を強化することで外交面でも影響力を強めたい。(この項おわり)
(2023/1/6 05:00)