社説/日銀緩和修正の副作用(上)市場機能改善も財政圧迫に懸念

(2023/1/11 05:00)

日本の10年物国債利回り(長期金利)は日銀が許容する上限の0・5%程度に達している。日銀が17、18の両日に開く金融政策決定会合でさらなる金融緩和の縮小に動くかを金融市場は注視する。ただ金融緩和の修正は国債や社債などの市場機能改善につながる半面、財政の圧迫や日銀の財務に影響を及ぼす副作用を伴うことに留意したい。

日銀は2022年12月の決定会合で金融緩和を修正し、10年物国債利回りの許容変動幅の上限を0・25%程度から0・5%程度に上げた。政策変更を受けて長期金利は上昇し、財務省が1月発行分の10年物国債の表面利率(額面価格に対する利率)を前月比2・5倍の0・5%に引き上げるなど、日銀が上限とする金利水準に達している。

金利上昇の余地がなくなったことで、日銀が次回会合で再びサプライズとなる政策修正に動くかを注視したい。ただ、政策の修正はプラス、マイナスの両面がある。プラス面は市場の歪みを是正し、市場機能を改善できることだ。日銀は前回の決定会合まで10年物国債を大量購入し、10年物の利回りは他の国債より突出して低下幅が大きかった。日銀が10年物利回りの抑制を緩和することで歪みは改善される。市場動向を反映した柔軟な政策修正が求められる。

ただ日銀が長期金利の上限をさらに引き上げれば、それだけ財政は圧迫される。金利が1%上昇すると、政府による国債の元利払いは25年度ベースで想定より3・7兆円増加するという。政府は決算剰余金の一部を防衛費の増額財源に充てる方針だが、金利上昇で剰余金が目減りする事態も想定されてくる。

日銀が保有する国債の評価損も膨らむ。金利1%上昇で日銀の保有国債に28・6兆円の評価損が発生するという。また金融機関が日銀に預ける当座預金の利払い負担も増えるなど、財務面での副作用が懸念される。

政府による大量の国債発行を日銀が引き受ける大規模金融緩和は限界を迎えている。金融政策の正常化を見据え、政府には確かな財政健全化計画を早期に打ち出してもらいたい。

(2023/1/11 05:00)

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