産業春秋/元日立副社長に見る経理部長のあり方

(2023/1/31 05:00)

最高財務責任者(CFO)は、最高経営責任者(CEO)、最高執行責任者(COO)に次ぐ企業のナンバー3とされる。ただ日本の伝統的な経理部長のあり方は、少し違っている。

日立製作所で執行役副社長、取締役会議長などを歴任した八木良樹さんが23日に亡くなった。経理畑ひと筋で、日立が1999年3月期に初の連結赤字に転落した時の財務担当専務。

日立は半導体事業を切り離すなど思い切ったリストラで業績を立て直すが、ITバブル崩壊で2002年3月期に再び赤字に沈む。さらに09年3月期には“日本の製造業史上最大”の7873億円という巨額赤字を計上した。

3度の赤字は異なる社長の時代だが、八木さんはずっと経営陣の一角にいた。ひょうひょうとした人柄で、時には笑みすら浮かべながら「悪い投資をしすぎちゃいましたねぇ」などと冷酷な数値を口にする。事業のけん引役ではなく、巨大な日立グループの“すべてを知る男”だった。

退任後は企業会計基準の見直しなどで産業界のご意見番として活躍した。多くの示唆に富む教えを頂いたが、日立の経営方針については口が堅かった。トップに仕える、良き経理部長を貫いたように思う。

(2023/1/31 05:00)

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