産業春秋／教員を憧れの職業に戻したい

　私事で恐縮だが、中学時代の恩師が亡くなった。最も尊敬した先生で「自分もああなりたい」と憧れた方だったのでショックは大きい。健康には留意していたようだが、コロナ禍第８波の犠牲となった。

　教科は数学。算数が苦手だった自分が数学好きになったのは先生のおかげだ。先生から「教師は人を育てる」ことと学び、一時は教員になりたいと考えた。だが公正さに欠ける自分には向いていないと断念した。

　作家で社会教育家の下村湖人に「意志は才能不足を補うが、才能は意志不足を補わない」という名言がある。自分にも強い意志があれば、教員になれたかもしれないと悔やまれる。

　教員不足が深刻だ。東京都の教員採用試験の受験者は２０１３年度採用に１万７３２６人を数えたが、２３年度採用は７９１１人。この１０年で半分以下に減った。若者の減少と過重労働が原因とされる。

　文部科学省が１６年度に実施した教育勤務実態調査によると小学校教員の３割、中学校教員の６割が過労死ラインを超えて勤務していた。この調査は６年ぶりに２２年度も実施され、結果が２３年度中に公表されるという。調査結果を踏まえた働き方改革を推進し、教員を憧れの職業に戻したい。