(2023/3/14 05:00)
2023年春闘は、15日に大手企業の集中回答日を迎える。この日を待たずに組合要求に満額回答を表明する企業が相次いでおり、賃上げ率が約30年ぶりに3%を超えるか注目したい。意欲的な賃上げは一過性で終わらせず、24年以降も継続することが重要だ。中長期的には持続的に賃金が上昇する「構造的な賃上げ」に向けた労働市場改革を実現できるかが焦点で、今春闘を起点に歩みを進めたい。
トヨタ自動車やホンダ、日産自動車などの自動車産業やサントリーホールディングス、IHIなどの大手企業で満額回答が相次ぐ。経団連の十倉雅和会長は、賃上げは「企業の社会的責務」と訴え、経営側の意欲的な決断に期待を寄せていた。
連合は賃上げ率5%程度を要求し、傘下の2614労組は平均4・49%の高い要求基準に達する。有期・短時間・契約等労働者は月給で5・26%増を求めており、経営側は非正規雇用にも配慮した対応が求められる。原材料価格の高騰分が十分に価格転嫁されていない中小企業との取引適正化も進めてほしい。
厚生労働省によると1月の実質賃金は前年同月比4・1%減と10カ月連続のマイナスで、個人消費もコロナ禍からの回復が鈍い。連合が求める5%程度の賃上げ率達成は難しいが、22年春闘の2%台が今春闘に3%台に引き上がるとの予測もあり、実質賃金を早期に増加に転じさせ経済の好循環を回したい。
大手企業を中心とした今春闘での意欲的な賃上げを今後も継続する必要がある。岸田文雄政権は「構造的な賃上げ」実現に向けた労働市場改革の指針を6月にまとめる。①リスキリング(学び直し)により労働者の能力向上を支援する②日本型職務給を確立する―などの施策により、自社の生産性向上による賃上げだけでなく、成長分野への労働移動によっても賃金の底上げを目指すという内容だ。ただ企業は働き方や賃金制度を見直す必要があり、どこまで呼応するかは見通しにくい。
23年春闘をデフレ脱却への契機とできるのか、岸田政権の政策実行力が問われてくる。
(2023/3/14 05:00)
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