(2023/3/20 05:00)
連合が2023年春闘の第1回集計をまとめた。平均賃上げ率は3・80%となり、前年同期の2・14%を大きく上回った。6月の最終集計で3%を上回れば29年ぶりの高水準となる。連合が要求する5%程度はハードルが高いものの、組合要求に満額回答を表明する大手企業が相次いでおり、経営側の意欲的な取り組みを評価したい。
今後は大手企業による意欲的な賃上げの勢いが中小企業に波及するかが焦点になる。
3年ぶりに2%台を回復した22年春闘に対し、23年は第1回集計で3%台に乗せた。1月の4%超の物価上昇率を下回るものの、日銀が見通す23年度の1%台半ばの上昇率を上回る。厚生労働省によると1月の実質賃金は前年同月比4・1%減と10カ月連続の減少で、個人消費もコロナ禍からの回復が鈍い。実質賃金を早期に増加に転じさせ、経済の好循環を回したい。
ただ需給ギャップがプラスに転じ、2%の安定的な物価目標を達成するには、24年以降も継続した意欲的な賃上げが必要になる。23年春闘では連合傘下の2614労組が平均4・49%の高い要求基準に達し、有期・短時間・契約等労働者は月給で5・26%増を求めていた。非正規雇用にも配慮しつつ、原材料価格の高騰分が十分に価格転嫁されていない中小企業との取引適正化も推進する必要がある。
政府、経済界、連合による政労使会議が15日に行われ、最低賃金の全国加重平均を1000円(22年は961円)に引き上げることや、人件費の取引価格への転嫁を推進することでも合意している。原材料価格などにとどまらず、賃上げ分も価格転嫁できれば、中小企業はより賃上げを実施しやすくなり、収益基盤を強化しつつ人手不足に対応できるようになるはずだ。
「構造的な賃上げ」の実現に向け、労働市場改革を進めることも欠かせない。政府は6月に指針をまとめる予定だ。リスキリング(学び直し)などを通じ、成長分野への労働移動を促すことで賃金の底上げを図る必要がある。23年春闘を起点にデフレ脱却への歩みを進めたい。
(2023/3/20 05:00)