(2023/3/21 05:00)
米国発の金融機関の信用不安が欧州に波及し、スイス1、2位の金融機関の買収劇に発展した。日米欧の6中央銀行は20日、信用不安の連鎖を警戒し、市場へのドル供給で協調すると発表。金融機関のドル資金繰りに対応するとの市場へのメッセージとして評価したい。市場では2008年のリーマン・ショックのような事態は想定されていないものの、各金融当局は連携して不測の事態に備えたい。
スイス最大手の金融機関UBSは19日、2位のクレディ・スイスを30億スイスフラン(約4300億円)で買収することで合意したと発表した。クレディ・スイスの筆頭株主が追加出資を拒否し、スイス国立銀行が最大500億スイスフラン(約7兆円)の融資枠を設定しても市場の警戒感は拭えなかった。スイス金融当局が後押ししたクレディ・スイスの救済により、信用不安が収束に向かうと期待したい。
米国で経営破綻した2行のうちシリコンバレーバンク(SVB)は、米連邦準備制度理事会(FRB)によるインフレ抑制に向けた金融引き締めで保有債券に巨額の含み損が発生。会員制交流サイト(SNS)で経営不安が拡散され“取り付け騒ぎ”に発展した。同行の経営破綻後、米国の銀行は米FRBから約1650億ドル(約22兆円)を借り入れ、額はリーマン・ショック時を上回っている。各行は信用不安の連鎖を警戒する。
SVBの経営破綻やクレディ・スイスの“救済買収”は固有の理由に起因するため、リーマン・ショックのような金融不安に陥らないとの見方もある。クレディ・スイスはかねて不祥事や経営不安が指摘され、債券投資に傾斜したSVBと同様に、独自の経営判断による。
ただ市場では信用不安の次なるターゲットを探しており、日米欧の6中銀は警戒心をもって事態を注視したい。日本の銀行は財務の健全性が高く、金融システムは安定している。ただ異次元緩和が銀行の収益基盤を弱くした側面は否めず、賃上げを起点とした経済の好循環を早期に回し、デフレから脱却することで金融正常化を実現したい。
(2023/3/21 05:00)