産業春秋/宇宙開発の無駄と失敗

(2023/4/5 05:00)

宇宙科学研究所はJR横浜線・淵野辺駅から住宅街を20分ほど歩いたところにある。ペンシルロケットに始まった日本の宇宙開発の中心で、1980年代に都内から米軍住宅の跡地に移転した。

宇宙航空研究開発機構(JAXA)に統合後も、固体燃料ロケットや科学衛星の研究を担う。キャンパスの一角に、地球外試料の受け入れ施設を建設する議論が始まったのは、初代の小惑星探査機『はやぶさ』がイトカワにタッチダウンした直後のことだ。

通信途絶やイオンエンジン故障で地球帰還が危ぶまれ、無駄になる恐れもあった。粛々と準備を進めていなければ、せっかく持ち帰った試料を生かせなかったかもしれない。

クリーンルームに真空チェンバーを並べた施設は、試料ごとに別にする。つまり『はやぶさ』と『はやぶさ2』それぞれに部屋がある。近く米国から分与される試料の受け入れ準備は「場所がなくてロビーにクリーンルームがはみ出した」とか。

国産ロケット打ち上げの失敗が続き、JAXAのスタッフには元気がないようにみえる。しかし先端技術は常に、無駄と失敗のスキ間から成果を模索するものだ。挑戦を諦めない限り、いつかゴールは見えてくる。

(2023/4/5 05:00)

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