(2023/5/10 05:00)
主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議が11―13日の日程で新潟市で開かれる。米3銀行の経営破綻に伴う金融不安に対し、各国が結束して金融システムの安定化を図る意向を表明する。交流サイト(SNS)を通じて預金が大量流出する“取り付け騒ぎ”への対応を協議するほか、金融機関に対する規制・監督のあり方などを話し合う見通しだ。欧米でくすぶる金融不安が世界経済の下振れリスクとなった。世界経済の軟着陸に向けG7は連携を強めたい。
米銀行の相次ぐ経営破綻は米連邦準備制度理事会(FRB)によるインフレ退治の金融引き締めが背景にある。シリコンバレー銀行(SVB)はコロナ禍での金融緩和下、債券運用に奔走したものの、インフレ抑制に向けた米FRBの利上げがSVB保有の債券の含み損を急拡大させた。SNSを通じて経営不安が拡散され、1日で4分の1の預金が流出する取り付け騒ぎに発展した。SNSへの対処を含め、デジタル時代ならではのリスクに備える必要がある。
3番目に破綻したファースト・リパブリック銀行(FRC)は2008年のリーマン・ショック以降で銀行として最大の破綻だった。米銀最大手のJPモルガン・チェースがFRCの全ての預金・資産を買収することで金融不安は和らいだが、大手行による救済にも限界がある。米FRBは銀行の経営不安を見抜けず、規制・監督の甘さを自らが認める。G7は今回の会議で効果的な規制・監督体制を打ち出し、金融市場に有効なメッセージを発信してもらいたい。
ただ中堅銀行への規制が厳し過ぎると自己資本比率向上を目的とした“貸し渋り”が増えかねない。米国および世界経済に悪影響が及んでは元も子もなく、慎重な議論が求められる。
今回のG7会合では対中国を念頭に、グローバルサウスを巻き込んだ供給網の再構築を議論するほか、ウクライナ支援の継続と対ロシア制裁の強化も話し合う。ロシアの23年の実質成長率はプラス0・7%が見込まれる。ロシア制裁の“抜け道”をふさぐ有効策も模索してほしい。
(2023/5/10 05:00)