(2023/5/9 05:00)
米欧が景気に配慮した金融政策に軸足を置きつつある。米連邦準備制度理事会(FRB)は2、3の両日に開いた会合で、次回の6月会合で利上げを停止する可能性を示唆。欧州中央銀行(ECB)も4日の会合で利上げ幅を0・25%にとどめ、前回まで3会合連続で実施した0・5%の利上げ幅を縮小した。米欧にくすぶる金融不安の緩和や景気の下支えにとどまらず、新興・途上国の債務問題を緩和させる効果にも期待したい。
ただ米欧ともインフレ率は依然高く、物価と景気両にらみの慎重な政策運営が求められる。日本は米欧との金利差縮小に伴う円高の進行に警戒したい。
米FRBは今回の会合で、政策金利を0・25%引き上げて5・0―5・25%とした。年末に見込む5・1%(中央値)をすでに上回ったほか、2カ月足らずで米3銀行が相次ぎ破綻した事態を考慮し、次回会合で利上げを停止する可能性が高まっている。米国の3月の消費者物価指数は前年同月比5%の上昇と、2月の6%上昇から改善していることも背景にある。
米FRBが利上げを継続すれば、米銀行の経営はさらに悪化し、預金流出や銀行の“貸し渋り”が米国経済を冷やしかねない。米国は年内に景気後退に転じるとの見方が根強く、米FRBが利上げに慎重姿勢を示したのは適切な判断だ。また5日に閉幕したアジア開発銀行(ADB)の年次総会では、米欧の利上げで深刻化する新興・途上国の債務問題への支援が指摘された。米欧は金融引き締めによる副作用にも目配りしたい。
ただ米欧のインフレ率は高く、欧州は米国より深刻だ。ユーロ圏の4月の消費者物価指数は前年同月比7%上昇と、米国(3月は5%上昇)の上昇率を大きく上回る。このためECBは利上げの停止は当面想定しておらず、今回の会合でも利上げ幅の縮小で対応している。あと2回の利上げの後、停止に向かうとの見方もあり注視したい。
米欧は金融、インフレ、景気の三つの課題をいかに軟着陸させるのか、大きな局面変化を迎えつつあることに留意したい。
(2023/5/9 05:00)
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