(2023/7/4 05:00)
1台で複数工程、月産倍増
ダイヘンの六甲事業所(神戸市東灘区)はロボットがロボットを作る工場で知られる。中でも中小型の産業用ロボット主力5機種で組み立ての自動化を進め、自動化率を90%まで高めた。得意とするアーク溶接以外に、ハンドリング用や搬送用のロボット開発も拡大中だ。大手から中小のモノづくり現場に向けて、それぞれ最適なロボットを使った自動化システムの提案を推進していく。(大阪・広瀬友彦)
六甲事業所はロボットの中核事業拠点として計5棟が立ち並ぶ。総延べ床面積は阪神甲子園球場の約2倍あり、組み立て棟の3階部分はダイヘンの自動化を象徴する。人がまばらな現場には、同社が応援するプロサッカーチーム「セレッソ大阪」にちなみ、ピンク色に塗装された7軸ロボットの動作が目立つ。減速機やモーターを組み付けロボットアームを組み立て、検査も行っている。
「7軸ロボットがボルトを取り出し、既定トルクで1本ずつ締め付ける。締め付け忘れはなく、生産履歴も取れるのが最大のメリットだ」。同社の神品泰宏執行役員FAロボット事業部長は自動化効果を強調する。
生産指示はタブレット端末で行う。自動倉庫と連動し、同社製の自律移動ロボット(AMR)がロボットの部品や本体、周辺機器を積み、工程間を搬送する。AMRは自社製ワイヤレス給電装置で自動充電される仕組みだ。
ロボットの組み立て現場は、自動化前の2015年3月時点では29人体制で組み立て・検査を行っていた。当時の月産能力は600台。ロボット活用による自動化が進んだ22年12月時点の月産能力は1200台と倍増したが、人員は3分の1の10人で対応可能にした。人件費換算で年3億円の削減効果があったとする。
工場建屋の新設・増改築を行わず、自動化を進めるのも同社の特徴だ。ロボット1台が複数の役割を担い、導入台数を抑え、省スペースで投資額も極力抑える。「中小の顧客が導入しやすく、自動化のヒントになることを心掛けてきた」(神品FAロボット事業部長)。
主力5機種はさらに自動化を進め、23年度はロボットアームにケーブルを組み付ける作業の自動化を進める。ハンド部を改良し、カメラやセンサーを駆使して自動化率95%を狙う。そして24年度以降には究極の100%を目指していく。
展示会などでPRしてきた協働ロボットも市場投入に向け、最終段階に入った。アーク溶接用途で23年夏に第1弾を出荷予定だ。
産業用ロボットで世界シェア10%―。FAロボット事業部は目標に掲げる。現在のシェアは5―6%のため、カギを握るのは「アーク溶接以外の得意用途を増やすこと」(同)。バリ取り、切断、ネジ締めとロボット用途を拡大し、AMRも他社との差別化を狙い製品群を充実させる。
「世の中の変化に応じ、我々のロボットも変化させていく」。神品FAロボット事業部長はロボット事業の成長へ、次を見据える。
(2023/7/4 05:00)