(2023/9/1 05:00)
地震大国の日本は、30年以内に首都直下地震が発生する確率が7割、南海トラフ地震は7―8割とされる。だが阪神・淡路大震災や東日本大震災を経ても事業継続計画(BCP)を策定していない中小企業が多く、自分事として取り組みを急ぎたい。首都直下地震は日本の国家予算に匹敵する経済被害も想定される。関東大震災が発生した9月1日は「防災の日」でもある。この機に、中小を含む産業界や家庭は、実施すべき防災・減災対策を確認しておきたい。
東京商工会議所の「会員企業の災害・リスク対策に関するアンケート」によると、BCPを策定した大企業は71・4%だったのに対し、中小は27・6%に過ぎなかった。東京都の帰宅困難者対策条例を認知している企業割合も大企業の65・8%に対し、中小は28・1%。同条例は安全確認が取れるまで従業員を一斉帰宅させずに事務所にとどめ、帰宅困難者などに備えて3日分の水・食料を備蓄することなどを求める。必要最低限の備えは全ての企業が講じたい。
都は22年5月、首都直下地震の被害想定を見直した。マグニチュード7・3で首都中枢機能を直撃する「都心南部直下地震」の場合、東京だけで死者6148人、約8万2200棟の建物が全壊。帰宅困難者は453万人に及ぶ。企業は従業員の安全と同時に交通インフラとサプライチェーン(供給網)の寸断にも備える必要がある。調達の多様化や、コロナ禍で導入が増えたテレワークなども活用し、早期の経済再開を目指したい。
首都直下地震による日本全体の経済被害について、政府は10年前の13年に95兆円と試算していた。政府はこの想定を見直す方針で、数字が上振れする可能性がある。東日本大震災の復興予算の支出額は20年度までの10年間で約38兆円だった。首都直下地震はこれを大幅に上回り、日本の国家予算に匹敵する未曾有の経済被害を招きかねない。
政府による国土強靱(きょうじん)化計画の推進はもとより、企業や家庭はでき得る対策を一つひとつ積み重ね、「その日」への備えを継続することが求められる。
(2023/9/1 05:00)
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