(2023/9/4 05:00)
経済産業省による2024年度税制改正要望は、蓄電池や半導体などの戦略物質への投資や賃上げを促す優遇税制の創設が盛り込まれた。戦略物質への投資拡大は脱炭素と経済安全保障の強化につながり、持続的な賃上げはデフレ脱却と経済好循環に結び付く。これら税制改正を実現し、グリーン・トランスフォーメーション(GX)などの戦略分野で日本企業の国際競争力を引き上げつつ、賃上げ企業の裾野を広げていきたい。
経産省は蓄電池や半導体を念頭に、生産・販売量に応じ税額控除を受けられる「戦略物資生産基盤税制」の創設を要望。電気自動車(EV)などに使われる蓄電池や半導体の国内生産を中長期で後押しするもので、これらの増産を促すことで脱炭素と経済安保の確保が進展すると期待される。米国ではインフレ削減法により同様の措置を講じており、日本も戦略分野で企業の取り組みを後押ししたい。
経産省は24年度予算の概算要求でも、蓄電池とパワー半導体のサプライチェーン(供給網)の強靱(きょうじん)化にそれぞれ4958億円、1078億円を要求した。世界各国でGX分野への投資競争が激化する中、日本企業も税制と予算の側面支援を受けて存在感を高めていきたい。
他方、23年度末に期限を迎える賃上げ促進税制の延長・拡充も要望した。大企業と中小企業に加えて「中堅企業」枠を新たに設け、大企業より適用要件を緩和するほか、赤字企業にも賃上げを促す「繰越控除制度」の創設を求めた。同制度は給与の支給総額が一定割合以上増えた場合に税額控除を適用する制度で、法人税を納めない赤字企業は対象外だった。これを見直し、賃上げを実施した年度以降に業績が改善すれば、赤字で利用できなかった税額控除分を繰り越せるようにするという。
日本の従業員数の約7割を占める中小企業の賃上げを促し、30年ぶりの高い賃上げ率を実現した23年春闘を持続させる効果に期待したい。中小企業の賃上げ分を取引価格に上乗せする価格転嫁も併せて推進することで、賃上げの裾野を広げたい。
(2023/9/4 05:00)