(2023/9/5 05:00)
岸田文雄首相は5―11日の日程でインドネシアとインドを訪問する。ジャカルタで開かれる東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議と、ニューデリーでの主要20カ国・地域(G20)首脳会議に出席。東京電力福島第一原子力発電所の処理水の海洋放出について、各国に安全性を説明し理解を求める。これらの会議に合わせ、日中首脳会談が開かれるかも焦点で、処理水をめぐり関係改善の糸口を見いだせるかを注視したい。
ASEAN関連首脳会議には域外から日米韓、中国、インドなどが参加し、複数の枠組みで会談する。中国からは李強首相、米国は欠席するバイデン大統領に代わってハリス副大統領が出席する。バイデン大統領不在の中、中国は処理水の不安をASEANと共有し、日本とASEAN間にくさびを打ちたい意向とみられる。日中の関係改善は見込みにくく、むしろ中国による日本攻撃が激化しかねないことに留意する必要がある。
中国政府は処理水の海洋放出に猛反発し、日本産水産物の輸入を全面的に禁止している。中国では日本製品の不買運動が広がり、中国の日本大使館や日本人学校に投石するなど風評が拡散している。中国政府が、自国経済への国民の不満を処理水にそらせている側面もあろう。
自民党内には中国の理不尽な禁輸に対し、世界貿易機関(WTO)への提訴を求める声もある。中国との関係悪化は避けたいが、今後の対応次第では毅然(きぜん)とした態度で臨みたい。
岸田首相はインドネシアとインドでの二つの国際会議を通じ、処理水の安全性で各国から理解を得ながら、5月の先進7カ国(G7)広島サミットで合意したグローバルサウス(新興・途上国)との連携強化を推進したい。日本とASEANは友好協力50周年を迎え、12月に都内で特別首脳会議も開く。日本企業が最も重視する投資先も、23年版通商白書では中国からASEANにシフトした。ASEANには中国との関係が深い国が多いことも勘案し、中国との対立よりも国際秩序の維持で協調し、連携を深めてもらいたい。
(2023/9/5 05:00)
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