(2023/9/18 05:00)
米欧の中央銀行がいつ金融引き締めを終了するのか、出口戦略が不透明になってきた。原油価格の高騰によるインフレの高止まりを警戒する。欧州中央銀行(ECB)は14日、政策金利の引き上げを決め、景気後退懸念より物価抑制を優先した。米連邦準備制度理事会(FRB)も19日からの会合では利上げを見送るものの、年内に再開するとの見方が市場には多い。欧米の中銀は景気にも目配りした慎重な政策運営が求められる。
原油価格が高騰している。米国産標準油種(WTI)は14日に1バレル=90ドル台に突入し、約10カ月ぶりの高値を付けた。1―7月は月間平均で同70ドル台、8月は同81ドルで推移していた。
石油輸出国機構(OPEC)プラスが6月に合意した協調減産の枠組み(2024年末まで日量200バレルの減産)とは別に、サウジアラビアが日量100万バレルの自主減産、ロシアが同30万バレルの輸出制限を打ち出したことが原油高騰を誘発した。
OPECは12日、23年の世界石油需要が前年比で日量244万バレル増えるとの見通しを発表した。この見通しも原油高騰に拍車をかけている。米欧が金融を引き締める中でも世界需要は底堅く、需給が一段と逼迫(ひっぱく)する事態に警戒したい。
米国の8月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で3・7%上昇し、2カ月連続で前月の上昇率を上回った。22年6月の同9・1%上昇から大きく低下したが、2%目標が遠のきかねない。米FRBが19、20日に開く会合で、年末の政策金利(中央値)見通しを5・6%から上げるか注視したい。現在、政策金利の誘導目標は5・25―5・5%で、5・6%維持なら利上げは年内に1回で済む。原油高騰の影響をどう見るか、慎重な判断が求められる。
ECBは14日、政策金利を0・25%引き上げ、23年の実質成長率を0・7%(6月の見通し0・9%)に下方修正した。8月のCPIの上昇率も5・3%と米国より高い。物価抑制と経済の軟着陸をいかに両立するか、原油高騰の中で米国以上に慎重な政策運営を求めたい。
(2023/9/18 05:00)