(2023/10/6 12:00)
大阪の町工場が海外の宇宙市場を開拓―。機械装置部品の切削加工を手がける湯本電機(大阪市東成区、湯本秀逸社長)は、小型衛星やロケットの部品開発に力を注ぐ。国内で培った高品質かつ短納期のモノづくり技術を武器に海外に乗り出す。2025年度から米国で、衛星部品などの開発受託を本格的に始める計画だ。宇宙分野への注力は中小製造業を悩ませる人手不足の解決にもつながると湯本社長は期待する。
「進出先はテキサス。来年度中には米国法人を設立したい」。湯本社長は展望を語る。開発や製造を請け負い、ベトナム子会社や日本で製作して米社に販売する事業を立ち上げる。デジタルマーケティングの専用ウェブサイトも整備する。まずは5年以内に年商10億円を目指す。
88年に設立した同社は、樹脂や金属の精密加工を得意とする。取引先は機械装置を中心に多岐にわたる。マシニングセンター(MC)や数値制御(NC)旋盤を使った高精度の切削と、複雑な形状の部品でも1―2週間で納められる対応力に強みがある。
「衛星部品は宇宙空間で確実に動作する高い精度を求められる」(湯本社長)ため、こうしたノウハウを生かしやすい。量産品のような価格競争に巻き込まれない利点もある。
人工衛星メーカーや大学が実証実験に使う治具や部品を手がけるなど、宇宙分野の実績を積み上げてきた。小惑星探査機「はやぶさ2」のカプセルの位置情報を取得する特殊なカメラシステムについて筐体部分を製作した経験もある。設計や製造が可能か1―2日で判断するレスポンスの速さを生かした。
これまでの実績を評価され、ベトナムでは国立研究機関と小型衛星の共同開発に乗り出す。子会社のユモトベトナム(ロンアン省)が、ベトナム科学技術院傘下のベトナム国家宇宙センター(VNSC)と、同国産人工衛星に関する基本合意書を締結した。
ユモトベトナムが部品や設備の設計、開発、製作を担う。まずは25年末までに熱構造モデルの完成を目指している。
ベトナムで展開する日系企業の製造拠点は低コストのモノづくりを重視したところが多い。一方、ユモトベトナムはホーチミン市工科大卒者などの専門知識・技能を備える技術者を擁し、日本で使われるものと同クラスの性能の5軸加工機を導入するなど「日本のモノ作り品質をベトナムでも発揮できる」(湯本社長)点で差別化を図る。
湯本電機は宇宙分野のみならず、工場を仮想空間上に再現するメタバースなどにも取り組んでいる。「旧態依然ではなく新しいことに挑戦している」(同)背景には、同社に興味を持つきっかけを増やして優秀な若手人材を確保したいという思惑もある。
将来の業績拡大を目指して人材採用を進める。将来の幹部候補となる20代に加え、ベトナム人・ミャンマー人らの外国人材や経験豊富な管理職人材なども拡充する方針だ。
(2023/10/6 12:00)
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