(2023/10/10 17:00)
軍事衝突拡大で世界経済に悪影響
ニューヨーク原油先物相場が先週末比で4%超上昇した。イスラム組織ハマスがイスラエルを攻撃したことで中東の地政学リスクが高くなり、国際指標の米国産標準油種(WTI)先物は9日(現地時間)に、一時1バレル当たり87ドル近辺まで上昇した。今後、中東での軍事衝突が拡大すれば、世界経済や石油の供給に悪影響を与えかねない。
4日に開催された石油輸出国機構(OPEC)プラスの合同閣僚監視委員会(JMMC)は協調減産など現行の政策を維持すると表明。その時点で原油価格が下がっていたにもかかわらず、価格引き上げの政策は取られなかった。これに対し楽天証券の吉田哲コモディティアナリストは「攻撃には政治的な意図が複数あるだろうが、産油国に近いハマスの攻撃は原油価格つり上げの意図も含まれていたのではないか」と分析する。
WTI先物は、日本時間の10日昼時点で同86・08ドル近辺で推移。ハマスによる攻撃によって、市場に戦争リスクプレミアムが付き、再び値を上げた模様。関与が疑われるイランへの報復の可能性が出てくれば、輸送をめぐる供給懸念も強まる。米国防総省が原子力空母を東地中海に派遣したと発表されたことも相場を押し上げている。
一方、好調が続く米国は長期金利引き上げ観測の温度感が高い上、中国経済の不安も原油先物の下押し圧力となっている。吉田氏は「年末に向けてOPECプラスの協調減産や中東情勢によって少しずつ上値を伸ばし再び90ドルには達するものの、下落圧力もあるため、年内は90ドル前後で高止まりするだろう」とみている。
(2023/10/10 17:00)
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