(2023/11/3 05:00)
政府は2日、総合経済対策を閣議決定した。裏付けとなる2023年度補正予算案を臨時国会に提出し、早期の可決・成立を目指す。物価高対策や賃上げ促進策、投資減税などを盛り込んでおり、デフレ脱却への糸口になるか注視したい。ただ本来なら24年度当初予算案に編成すべき項目や、24年度税制改正の一部を盛るなど、規模を追求した感も否めない。補正と当初の両予算で重複を避けるなど、財政健全化への配慮も求めたい。
総合経済対策は、ガソリンや電気・ガスの価格抑制措置の延長・拡充といった物価高対策にとどまらず、構造的な賃上げと投資拡大、人口減少を乗り切る社会変革、国民の安全・安心など、広範な対策を盛り込んだ。デフレ脱却や経済安全保障、脱炭素などを推進するもので、社会課題の解消に向けた取り組みを強化することは評価できる。
ただ中長期で推進する構造的な賃上げやサプライチェーン(供給網)の強化、国土強靱(きょうじん)化などは、24年度当初予算案で審議を深めるべき項目のように映る。補正予算は財政法第29条で緊急性を要件とし、自然災害や経済の急変を想定している。歳出拡大の“隠れみの”となりやすい補正予算のあり方についても、与野党は臨時国会で審議を深めてもらいたい。
他方、所得・住民減税は高所得者を対象から外すなど、所得制限を設ける案がある。年末に策定する税制改正大綱でメリハリの効いた税制に仕上げたい。
総合経済対策は24年度当初予算案で措置する所得・住民減税を加えると17兆円規模に達する。リーマン・ショック後の09年度の経済対策は14兆円で、これを上回る。東日本大震災の復興予算は10年間の累計で32兆円だった。総合経済対策は23年度当初予算で計上した予備費を財源の一部に充てるものの、財政への配慮は十分とは言えない。
コロナ禍で計上した3回の補正予算は計140兆円に達し、政府は予算編成をコロナ禍前の「平時」に戻す方針を示していた。デフレ脱却と同時に、政府は日本の厳しい財政事情にも正面から向き合う必要がある。
(2023/11/3 05:00)
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