(2023/11/14 05:00)
経済好循環を実現し、デフレ脱却の糸口を見いだせるのか、日本経済が正念場を迎えている。上場企業の2023年4―9月期決算は全体で最高益を更新する見通しで、賃上げを促す税制措置などを盛り込んだ総合経済対策もまとまった。24年春闘で意欲的な賃上げが実現すると期待したい。ただ足元で低下傾向の原油価格が再高騰しないのか、中東情勢や中国経済の動向には警戒する必要がある。
SMBC日興証券の9日までの集計では、東証株価指数(TOPIX)採用銘柄の約7割の当期利益が前年同期比約7%増加し、最高益をうかがう。コロナ禍からの経済再開や円安が奏功した。24年春闘に向け弾みが付いたと受け止めたい。
岸田文雄政権は事業規模37・4兆円の総合経済対策の裏付けとなる歳出13・1兆円の23年度補正予算案を10日に閣議決定した。大企業への国内投資促進策はもとより、中小企業の省人化投資や価格転嫁を支援する対策がどこまで効果を発揮するか注視したい。連合は24年春闘で5%以上の賃上げ目標を掲げる。政府が月内に開く政労使会議で、賃上げ機運がさらに醸成されることが期待される。
24年春闘次第では、日銀がマイナス金利政策を解除するなど金融政策の正常化に動くとみられる。マイナス金利は主要国では日本だけで、過度な円安を招きやすい。“金利ある世界”への回帰が求められる。
大きな懸念は、緊迫化する中東情勢の行方だ。足元の米国産標準油種(WTI)は1バレル=80ドルを割り、イスラエルとイスラム組織ハマスの軍事衝突前より安い。産油国は減産に動いているものの、世界経済の減速懸念から下落している。サウジアラビアなどによる一段の減産や、ハマスを支援するイランの関与が中東情勢をさらに悪化させ、原油が再高騰する可能性には十分に警戒する必要がある。
中国も不動産不況で経済が低迷し、日本企業の4―9月期決算は中国事業の苦戦が相次ぐ。中国が23年に行う1兆元(約21兆円)の国債追加発行は景気を浮揚させるのか、注視したい。
(2023/11/14 05:00)
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