人と生きる ロボット新時代(11)川崎重工業社長・橋本康彦氏

(2023/11/22 05:00)

クリーンルーム省人化

―「2023国際ロボット展」の出展テーマは。

「展示コンセプトは『Beyond Borders(境界を超える)』。一歩先の未来のロボットを披露したい。あらゆる分野で労働力不足が顕著だが、製造業であってもロボット密度は4%に過ぎない。当社が目指す究極のロボットの姿は人に寄り添えること。その姿に確実に近付いていることを示す」

―トップシェアの半導体製造装置向けロボットも展示します。

「直接的な半導体製造装置向けロボットに限らず、半導体製造プロセスにおける新たな自動化領域への挑戦を訴求する。一例として、当社が得意とする遠隔関連技術などを生かし、有害物質の発生リスクを伴うクリーンルーム内を省人化する仕組みなどを提案する」

―24年度での半導体市況回復への期待が高まっています。半導体向けロボットの強化策は。

「(半導体分野で)ロボットに対する要求が高くなっている印象だ。従って顧客固有の要望に応えられる当社のようなパートナーに新規開発を依頼する比率が上がっている。当社には航空宇宙事業でのジェットエンジン製造の経験から得られた流体や熱解析、静音化など優れた技術がある。それらをロボットに応用すれば、高速で動かしても振動が少なくウエハー搬送時に傷が付きづらい。総合技術力が大きな武器であり高付加価値の領域に徹底的に力を入れる」

―人工知能(AI)といったデジタル技術でロボットはどのように進化しますか。

「AIはロボットにとって非常に大切だ。逆にAIも能力を表現する際の“デバイス”としてロボットを使える。リアルの世界とデジタル技術を組み合わせ、時空を超えた形で世界を効率化するという難しい課題解決を図る上でも相性が良い。今後、AIとネットワーク環境が劇的に良くなることが予想され、AI連携しながらコミュニケーションを図るロボットの市場は格段に成長するだろう」

―産業用の枠にとらわれない「総合ロボットメーカー」への転換を図っています。

「特定用途の自動化支援だけでなく、働き方や生活様式を変えることに挑戦したい。高齢化社会の進行に加え、コロナ禍を経験してリモートでの働き方も普及した。ただエッセンシャルワーカーを筆頭に、働き方に制約がある職業もある。サクセサーなどを通じて、人が幸せに生きる上でロボットを必要不可欠な存在としたい」(増重直樹)

(2023/11/22 05:00)

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