(2023/11/24 05:00)
「イノベーションボックス税制」の創設も2024年度税制改正の大きな焦点になる。国内の研究開発で得た知的財産所得を対象に、法人税を軽減する優遇措置を講じる。研究開発拠点の立地競争力が高まるほか、民間企業の無形資産投資を後押しする効果を期待できる。日本の技術の海外流出を防ぐ狙いもある。経済安全保障の観点からも、国内での研究開発を促す効果的な税制に仕上げたい。
イノベーションボックス税制は欧州や中国、韓国、シンガポールなどのアジア諸国も採用している。特許や著作権といった知的財産から生じた所得を他の所得と切り離し、法人税を優遇する。フランスと英国は法人税率が25%なのに対し、イノベーションボックス税率はともに10%。米国も22年8月に成立したインフレ抑制法で、自国での研究開発を税制面で優遇しており、日本も早期に対応したい。
経済産業省によると、日本企業は過去10年で海外への研究開発投資額が2倍に増え、M&A(合併・買収)により研究開発拠点を複数の国に構える事例も増えているという。グローバル化に伴って日本の技術の海外流出が増える一方、外国企業が研究開発拠点として日本に魅力を感じていないとの指摘もある。
イノベーションボックス税制の創設により、海外の研究開発拠点の日本誘致・高度な研究人材の確保につながり、日本企業の海外拠点が日本に戻る効果も期待できる。地域の雇用創出にもつながろう。英国では、知的財産を商業化することで、企業の国内での研究開発投資が10%増えたとの報告もある。知財の所得が新たな研究開発を促し、その研究で得た知財が新たな所得を獲得する。日本もこの好循環を実現し、研究開発の国際競争力を高める必要がある。
課題はイノベーションボックス税制の対象範囲をどこまで許容するかだ。知財の譲渡収入やライセンス収入などのほか、知財を組み込んだ製品の売却益も想定される。製品の売却益のうち、どこまでを知財の収入として切り分けるのか、政府・与党には慎重な議論が求められる。
(2023/11/24 05:00)