社説/トリガー条項の発動検討 地方財政に配慮し慎重な議論を

(2023/11/27 05:00)

岸田文雄政権は、ガソリン税を一部減額する「トリガー条項」の凍結解除(発動)を検討する。ガソリン価格を抑制する激変緩和措置が2024年4月に期限を迎えるため、それ以降の価格抑制策に想定する。ただ地方税収が減額するほか、政府の価格介入により市場機能を歪める懸念がある。原油価格の行方も見極めつつ、地方財政に配慮した慎重な議論を求めたい。

トリガー条項は旧民主党政権が10年に導入したが、11年の東日本大震災の復興財源を確保するため同条項を凍結。現在も凍結されたままだ。岸田政権が同条項の凍結解除を検討するのは、国民民主党の玉木雄一郎代表が凍結解除を条件に「23年度補正予算案に賛成していい」と迫ったことによる。内閣支持率が低下する中、岸田首相が補完勢力の拡大を狙って応じたように映る。だがトリガー条項は課題が多く、審議を尽くしたい。

トリガー条項は、ガソリン価格が一定以上に値上がりした場合、ガソリン税を引き下げる措置。ガソリン税は揮発油税(国税)と地方揮発油税(地方税)から成り、地方の税収減が自治体に及ぼす影響が懸念される。

鈴木俊一財務相は国・地方で「1・5兆円もの巨額の財源が必要になる」とし、西村康稔経済産業相も、申請を行うガソリンスタンドの事務負担が増えることなどに懸念を示している。

トリガー条項には、激変緩和措置に含まれている重油や灯油が対象外であるほか、政府の価格介入が市場機能を歪めかねない。本来なら値上げにより購入を控える局面でも、価格を抑えているため購入量は変わらず、脱炭素に逆行するとの指摘もある。他方、激変緩和措置もトリガー条項も、富裕層を含め一律に恩恵を受ける仕組みだ。低所得者に対象を絞るなど、財政規律への目配りも求められる。

原油価格の動向も注視したい。足元は世界経済減速を見据え落ち着いているものの、利益を追う産油国による一段の減産や中東情勢の悪化に伴う供給制限が高騰を招きかねない。来春以降の原油価格の動向も見極めつつ適切な対策を模索したい。

(2023/11/27 05:00)

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