(2023/11/28 05:00)
株式の非上場化に動く企業が相次いでいる。上場企業は、株価上昇や株主還元といった短期的な利益を株主から求められる傾向が強い。上場を廃止することで、中長期の視点で経営改革に取り組みたい企業が増えているようだ。「物言う株主」による経営圧力に左右されず、迅速な意思決定も可能になる。一方、上場廃止で情報開示が後退する懸念も指摘される。上場廃止は、企業の事業構造改革に向けた有力な選択肢として増加傾向が続くのか、注視したい。
大正製薬ホールディングス(HD)は24日、MBO(経営者による企業買収)を行い、上場廃止を目指すと発表した。買い付け総額は約7100億円で、日本企業のMBOでは過去最大規模となる。大衆薬が伸び悩む中、迅速に意思決定できる体制に改め、インターネット販売や海外事業を強化するという。
ベネッセHDも10日、MBOを実施し、株式を非上場化すると発表。少子化により通信教育「進研ゼミ」などの利用者が減少しており、長期的に事業改革に臨める経営環境を整える。
両社とも中長期の視点で企業価値を向上させるため、上場廃止を選択した。MBOで上場廃止を目指す企業件数(レコフ調査)は2022年の12件に対し、23年はすでに16件に達したという。東京証券取引所が求める株価純資産倍率(PBR)1倍に届かない企業などの間で、さらに増えないか注目したい。
東芝のように、利益相反する「物言う株主」を退場させるために上場を廃止するケースもある。国内投資ファンドの日本産業パートナーズ(JIP)陣営が実施した東芝株へのTOB(株式公開買い付け)が成功し、12月20日に上場廃止となる。
ただ、経営者の保身を目的とした買収防衛策の乱用や非上場化は企業価値を高めない。経済産業省は8月末に「同意なき買収」の行動指針をまとめ、買収する側とされる側の双方の企業価値向上に資する買収提案については、真摯(しんし)に検討するよう求めている。上場廃止は倒産などを除き、前向きな構造改革の選択肢の一つと位置付けたい。
(2023/11/28 05:00)
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