社説/診療・介護報酬の改定 処遇改善も少子化「財源」に課題

(2023/12/18 05:00)

医療・介護従事者の「賃金」が引き上がる見通しだ。政府は2024年度に、医療従事者の給与を含む診療報酬の「本体」と介護報酬を引き上げる方針を固めた。中でも介護従事者の処遇が改善に向かうことで、離職に歯止めがかかると期待したい。一方、医療・介護分野の歳出削減が進まず、少子化対策の財源確保に課題を残す。富裕な高齢者の保険料負担の引き上げなど具体策の整備を急ぎたい。

診療報酬は「本体」と、薬の公定価格「薬価」で構成する。24年度は本体を0・88%引き上げる一方、薬価を1%程度引き下げ、診療報酬全体では小幅な減少となる。賃上げを求める厚生労働省と、診療報酬全体のマイナス改定を譲らない財務省の双方がメンツを保った形だ。

介護報酬は1・59%上げる方針で、前回改定(21年度)の0・7%増を大幅に上回る。介護従事者の月給は全産業平均より7万円も安く、継続的な賃上げで現場の人材難を緩和したい。

一方、少子化対策の財源確保に課題を残す。政府は児童手当の拡充などの施策を24―26年度に集中して行い、追加で年3・6兆円の財源が必要になる。社会保障費の歳出削減や、医療保険に上乗せする新たな支援金制度などで賄う方針だが、1・1兆円分の歳出削減策が決まらない。財源確保を待たずに給付先行の議論を進めたところに岸田文雄政権の大きな問題がある。

政府の全世代型社会保障構築会議が5日に示した社会保障費の削減案には、金額や時期などの目標が盛り込まれなかった。高収入の高齢者を念頭に、自己負担額の決定に金融資産を加えたり、医療費の窓口負担を見直すなど、同会議が示した検討項目を早期に詰める必要がある。

内閣支持率が低下する岸田政権は、少子化対策の財源としての消費増税を早々に封印した。経団連は国民が広く薄く負担する消費増税も選択肢と提言する。そもそも少子高齢化で社会保障費が増え続ける中、それを上回る歳出削減は容易ではない。結局は国債頼みとならぬよう、経済界の指摘にも耳を傾け安定財源を確保してもらいたい。

(2023/12/18 05:00)

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