(2023/12/22 05:00)
2024年度の日本経済は、実質成長率1・3%程度を確保し、所得増加率が物価上昇率を上回る。内閣府が21日公表した政府経済見通しは、実質賃金が増加に転じ、デフレ脱却に近づくことが期待される。日銀の金融政策も正常化が視野に入る。ただ24年春闘や世界情勢の先行きに不確定要素が少なくない。民間シンクタンクより楽観的な試算で、政府の見立て通りとなるかは慎重に見極めたい。
内閣府によると、24年度の所得は前年度比3・8%増、物価は同2・5%上昇すると見通す。10月まで19カ月連続で減少している実質賃金が増加に転じれば個人消費が喚起され、経済の好循環が回ると期待される。
ただ所得の増加率3・8%のうち、1・3%は1人4万円を支給する定額減税などの効果による。一時的な給付のため、消費喚起が長続きしない可能性が大きい。実質成長率1・3%についても、政府の総合経済対策により個人消費と設備投資の内需が主導するとの推計だが、中東情勢や米中の経済減速が内需に及ぼす影響が懸念される。中東の軍事衝突は長期化が想定され、高水準の政策金利が続く米国経済や、不動産市況が低迷する中国経済は楽観視できない。
政府の12月の月例経済報告では、設備投資は「持ち直しに足踏みがみられる」だった。大企業は円安を受けて業績堅調だが、世界経済の先行き警戒感から、利益が十分に投資に回っていない現状が示された。この警戒感が24年春闘に及ばないか、先行きを注視する必要がある。
日本経済研究センターがまとめた12月のESPフォーキャスト調査によると、エコノミスト38人は24年度の実質成長率を平均で0・88%と予測する。政府見通しの1・3%より厳しく見通している点に留意したい。
日本経済が外需に依存できない中、内需主導の成長を実現するには、24年春闘で高水準の賃上げ率を達成することが求められる。大企業の間ではすでに賃上げ率7%を掲げる企業も出てきている。こうした流れを継続させ、中小企業にも波及することで政府見通しを実現したい。
(2023/12/22 05:00)
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