(2023/12/25 05:00)
日銀による金融政策の正常化が、政府に財政規律の順守を促すと期待したい。超低金利から「金利のある世界」に戻れば、国債費の増額が財政をさらに圧迫する。日銀が金融緩和で実施してきた国債購入も減り、政府は安易に国債を発行しにくい環境になろう。財政健全化が遠のいた2024年度政府予算案を最後に、岸田文雄政権は財政規律にも配慮した経済財政運営を推進してもらいたい。
24年度政府予算案の一般会計総額は2年連続で110兆円を超える112兆円台で、歳出の3割を新規国債の発行で賄う厳しい財政事情が続く。日銀の政策修正に伴う長期金利の上昇を見据え、国債費の想定利回りを1・9%(23年度は1・1%)と17年ぶりに引き上げたほか、高齢化で歳出増が続く社会保障費の歳出削減が進まず、防衛費も財源の増税時期が未定だ。
国債費、社保費、防衛費が過去最大となったことが一般会計総額を押し上げた。総額は23年度当初予算をわずかに下回るものの、コロナ禍対策で計上してきた予備費削減などの一時的な要因を除けば、23年度を上回る総額であることに留意したい。
このうち社保費は「診療・介護・障害福祉」報酬の同時改定で賃上げを優先し、全体では歳出増となった。賃上げは政権の政策と整合的で評価できるものの、歳出削減による少子化対策の財源確保に課題を残した。
防衛費は増税による財源が定まらないまま過去最大の歳出を計上。27年度までの5年間で総額43兆円の巨費を投じる計画だが、減税を先行する岸田政権は増税時期を決められずにいる。少子化対策と防衛費の「二つの財源」を早期に確保し、予算編成を平時に戻してもらいたい。
政府経済見通しによると、24年度は所得増加率が物価上昇率を上回る。実質賃金のプラス転換とデフレ脱却が視界に入れば日銀は金融政策の正常化を検討する。政治資金問題でアベノミクスを推進する安倍派の勢力が低下すれば、日銀は政策修正しやすいとのエコノミストの指摘もある。24年度が財政健全化への起点となるか注視したい。
(2023/12/25 05:00)
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