(2023/12/26 05:00)
政府は少子化対策を拡充する「こども未来戦略」を閣議決定した。若者・子育て世代の所得を伸ばす施策が並ぶ。若年人口が急減する2030年代を前に少子化に歯止めがかかると期待したい。ただ財源を確保せずに給付を先行したことで、現役世代の負担が増えかねない課題を残した。今後、政府は政策効果を検証し歳出の重点化を図りつつ、消費増税なども選択肢に安定財源を確保してほしい。
政府は24年10月から児童手当を拡充し、支給期間を高校生まで延長し、第3子以降は給付を月額3万円に増やす。3人以上の多子世帯の高等教育費は25年度から無償化し、親の就労要件を問わずに利用できる「こども誰でも通園制度(仮称)」を26年度から実施。男性の育児休業取得も推進し、若者が安心して子育てできる環境を整える。
ただ児童手当に所得制限を設けないなど、歳出にメリハリが付いていない点が懸念される。高所得者を対象から外す重点配分が必要だ。24年度の「診療・介護・障害者」報酬の改定も全体で増額となり、社会保障費の歳出改革の難しさを浮き彫りにした。高収入の高齢者に介護保険料の増額を求める応能負担は先送りされ、むしろ現役世代の負担が増えかねない。年齢でなく負担能力で支える全世代型社会保障制度の構築が待たれる。
政府は少子化対策に集中して取り組む24―26年度に追加で年最大3・6兆円を投じる。財源は、26年度までに社会保障費の歳出削減、医療保険に上乗せする新たな支援金制度、規定予算の活用で確保し、必要に応じてつなぎ国債を発行する。安定財源は28年度までに確保する。ただ支援金制度は収入で拠出額が決まる仕組みのため、現役世代の負担増とならないか心配だ。
岸田文雄政権は少子化対策の財源について、国民負担率を増やさない意向を示す。だが分母の賃金が伸び悩めば負担率は上昇する。高収入の高齢者を念頭に医療費の窓口負担を見直し、消費増税もタブー視せずに議論したい。結局は国債頼みとなれば将来世代に禍根を残すことになり、元も子もなくなる。
(2023/12/26 05:00)
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