(2023/12/28 05:00)
2023年の日本経済は〝安いニッポン〟を浮き彫りにした。円の購買力は、1ドル=360円だった固定相場時代とほぼ同水準まで下落した。海外に見劣りする賃金を引き上げてデフレから脱却し、さらに貿易収支の黒字化により日本の稼ぐ力を引き上げる必要がある。24年は安いニッポンの汚名返上に向けた転機の年と位置付けたい。
通貨の購買力を示す実質実効為替レート(20年=100)が11月に71・62と、1970年8月の過去最低73・45を下回った。国際決済銀行(BIS)の調査で、半世紀前よりニッポンは安くなったことになる。
まずは過度な円安の是正が求められる。23年は1月の平均為替レートが1ドル=130円30銭台だったのに対し、11月は同149円80銭台と20円近い円安となった。米欧が記録的なインフレを抑えるため金融引き締めを強めた一方、日本は大規模金融緩和を継続し、金利差から円が売られやすくなった。
円安は輸出の増加に有利に働くものの、すでに日本企業は海外生産を増やし、円安効果は薄れている。むしろ輸入物価の上昇が実質賃金を低下させ、個人消費を冷やしかねないマイナス面に留意する必要がある。
足元の日米の長期金利はともに10月より低下している。米国が経済の軟着陸に向け、24年に利下げに転じることを市場は織り込む。10月に5%超だった米国の長期金利は足元で3・8%台、日本もつれて10月の0・9%が0・6%台に低下した。だが日米の金利差はなお開きがある。日銀が金融政策を正常化し、「金利のある世界」に戻すタイミングを注視したい。
経済協力開発機構(OECD)によると、22年の世界の平均賃金で日本は38カ国中25位、1人当たり名目国内総生産(GDP)は21位に沈んでいる。長引いた低成長とデフレがコストカット経済を招いた影響が大きい。24年春闘での意欲的な賃上げはもとより、中長期的に労働市場改革を前に進めたい。産業界は企業価値を高める成長投資も推進し、日本の稼ぐ力を引き上げることが強く求められる。
(2023/12/28 05:00)