(2024/2/6 12:00)
サッポロビールは2023年12月期に男性社員の育児休業取得率100%を達成した。25年度目標を2年前倒しして達成。「22年度の取得率81%から引き上げるため、取得への不安を払拭する『収入シミュレーションシート』などの支援策を講じた」(内山夕香人事部長)ことが、対象の全男性社員の取得につながった。この中には同社で2例目となる1年間の長期育休を取得した社員も含まれる。今後20日ほどの平均取得期間のさらなる延長に向けて、支援策の拡充なども検討する。
サッポロビールは16年ごろから働き方改革の一環で男性社員の育休取得を促進してきた。男性社員の働き方の意識も変わり始めたことで、取得率は17年度以降に60%超から70%超と伸びていった。しかしながら21年、22年になると80%ほどで伸びが止まってしまった。
内山部長は「育休取得の不安について社内アンケートを21年に実施した結果、多様な声が上がってきた」と明かす。最も多かったのは「収入面の不安」だった。次いで「業務の引き継ぎ」や「職場の雰囲気」に関する懸念。さらに「評価・キャリアへの影響」を気にする声も少なからずあった。これら不安が取得に踏み切れない残り20%ほどの壁になっていることが分かった。
それと同時に取得期間の延長も課題だった。育休期間は最長で1年の取得が可能だ。しかし同社の場合22年の平均は19日ほどで、厚生労働省の調査による平均45日ほどには全く及ばなかった。同社は「会社から距離を置いて客観視しながら、多様な経験をすることが個人の成長にもつながる」という視点から23年度目標で平均20日以上に設定した。
同社は100%取得と長期の取得を後押しする支援策を展開した。その一つが「収入シミュレーションシート」で、本人の給与明細を活用し1カ月当たりの手取り額を簡単に確認するツール。希望する取得日数に合わせて支給される育児休業給付金を把握し長期間取得を検討できる。また、「育休ガイドブック」を作成し、長期取得した事例などを参考に計画的な準備に役立てるようにもした。
こうした効果もあり平均取得日数は20日超を達成。23年10月には2例目となる1年の長期取得を決断した社員が現れた。長期育休でも評価で不公平にならないように人事制度も対応している。また、「短期間の場合は職場での仕事の割り振りを変える必要があるが、長期間になれば後任者を決めやすいというメリットもある」(内山部長)と指摘する。
さらに同社は長期取得のために、早めに計画・相談できる仕組みも検討している。2例目の長期育休のケースで、子どもの出生前の段階から上司に相談したことで、計画的な取得につながったことがきっかけになった。現在は子ども出生時に会社に申請し期間を検討している。新たな仕組みではパートナーの妊娠が分かった時点で「出産予定日」「希望育休取得期間」を報告でき、早期から計画を検討するきっかけになるとする。
(2024/2/6 12:00)
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