ベルテクネ、業務の見える化徹底 利益把握、選別受注可能に

(2024/2/13 12:00)

ベルテクネ(福岡県須恵町、前田努社長)は、精密板金加工メーカー。ステンレスやアルミニウム、鉄などの折り曲げ、レーザー、溶接組み立てなどの加工を得意とする。食品や医療、IT、水産関連、一般産業機械分野向け製品を生産する。会社の働き方を大きく変えたのは、鐘川喜久治会長が社長時代に始めた「業務の見える化」と「社員主体経営」の推進だ。

  • 本社事務所。社員の意見を取り入れてパーテーションをなくした

ベルテクネは20年以上前から業務の見える化に取り組む。当時は珍しかった販売管理システムを構築。原価をはじめ、抱えている案件の量や収益を見える化した。また、工程管理から生産性、作業者別にかかる時間単価などから利益の有無や要因を分析。その結果、顧客開拓の時点で原価や利益を見通すことができ、選別受注を可能とした。

販売管理システムの導入やバージョンアップに1億円以上を投資したが、それ以上の効果を生んでいる。生産管理ソフトはリアルタイムでの納期管理や工程の時間管理を実現した。経常利益率は導入前と比べ2倍の10%に向上した。

一方で同社が経営理念に掲げるのが「社員主体経営」だ。役員の報酬額や決算書などを開示することで、全社員が「経営に貢献している」と実感できるようにし、経営陣と社員の信頼関係の構築につなげた。

休暇制度も改定した。従来の休暇は年間94日だったが、19年に週休2日制を導入して同126日に増加。労働時間は減少したが、社員が自ら時間配分や効率化を進めた結果、利益が落ちることはなかった。

22年には男性の育児休暇や介護休暇の制度を導入した。対象となる社員は出勤時間を柔軟に変えられる。また、有効期限を超えた休暇を最大100日まで積み立てられるプール休暇制度を取り入れた。育児や介護、長期入院に活用できる。

  • 「設備投資の強化で、残業負荷の低減や平準化を実現した」と話す鈴木常務㊧

従業員のモチベーションを高めるため、10年以上前に国家資格取得の支援も始めた。板金の技能検定をはじめ、建築施工、電気工事施工の管理技士、日商簿記検定などの国家資格取得者には手当を支給する。

前田社長の肝いりでデジタル変革(DX)にも力を入れている。19年にはタブレット端末を導入してペーパーレス化を進め、工場内で六つに分散する各部署をデジタルで結んだ。紙でのやりとりをなくして労働負荷を軽減したことが、生産性向上に結びついている。

設備投資の強化も働き方の変化につながった。約15年前からほぼ毎年、プレス機の更新を続けている。ベテラン技術者の経験をデータ化し、技能伝承を加速。新しい設備の導入や外注の活用などにより繁忙期の残業負荷の平準化を実現した。

社員の意見を取り入れ、本社事務所のパーテーションをなくす工夫もしている。あの手この手で進めている働き方改革について、鈴木幸男常務は、「自社や取引先のメリットだけでなく、ひいては地域貢献につながる」と胸を張る。

(2024/2/13 12:00)

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