(2024/2/16 12:00)
―執筆の動機は。
「金融機関がサステナビリティー(持続可能性)に動き出した理由や背景をひもといた。環境問題と金融業界に関心がある人に向けて書いた本だ。それぞれの考え方を知らないと環境問題という外部不経済を市場に入れていくことができない」
―気候変動や脱炭素に対する社会の動きをどう見ますか。
「環境問題はいまだコストと捉えられている。経済と環境の好循環が叫ばれ始めたが道半ばだ。一方、若い人たちの間では環境問題にお金が動くことへの関心が高まっている。人工知能(AI)といったテクノロジーを駆使し、難題に挑む若者には期待している。ただ、本音を言えば我々世代が問題を託すことはしたくはなかった」
―日本の金融機関もグリーンボンド発行やカーボンクレジット取引に動き出しました。
「海外では既に環境関連の市場が立ち上がっており、事業会社はマーケット経由で資金を得られる。対して日本は、資金調達を主に担う立場の銀行が、環境問題をビジネスチャンスとして本気で捉えていない部分がある。気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)開示のようなリスクに対する関心という側面が強い。海外からの資金流入も含め、今後5年ほどかけて国内市場が拡大していくのではないか」
―スタートアップや中小企業にも環境対応の重要性が増します。
「(気候変動に対応する)『クライメートテック』のスタートアップが増えた。コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)や銀行の組成した新たなファンドが新興企業に資金提供する動きが広がる。また、中小企業に脱炭素を広げるには、地方銀行や信用金庫が排出量可視化ツールなどを提供するのが重要。中小でも環境問題に取り組んでいることを積極的にアピールできれば、取引先が広がったり、若い人がやってきたりとさまざまなチャンスが生まれる」
―“脱炭素マネー”の盛り上がりを一過性のバブルとして批判する人もいます。
「気候変動はさまざまな要因や現象が複雑に絡まっており全体の把握が難しい。とはいえ異常気象や災害は、私たちの生活に深刻な影響を及ぼしている。既に問題が起きており、自然に良くなる見込みがない以上、バブルでは済まないだろう」
―グリーンウォッシュ(見せかけの環境対策)への対策は。
「企業が環境法を守ることはグリーンウォッシュ以前の問題。その上で守っていたとしても、環境負荷がそこまで小さくない商品を誇大にアピールするなどの問題は出てくるだろう。資金が本当に環境のために使われているのかモニタリングし、定量的に評価する仕組みが必要になる」
―読者に伝えたいことは。
「本では環境問題にまつわる金融の動きをまとめた。過去を知り未来をサステナブルにする一助にしてほしい。環境問題は持続可能な経済の土台。その先に広がるウェルビーイング(心身の幸福)の実現こそ究極の目的だ」
(2024/2/16 12:00)
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