第49回発明大賞、受賞製品・技術のポイント 考案功労賞

考案功労賞（50音順）

注射針用廃棄箱＝イワツキ（社長・岩月宏昌氏ほか２人）

　ペン型注射針廃棄時の針刺し切創によるウイルスなどへの感染の危険性をなくした。従来必要だった針ケースへのリキャップ作業を不要とすることで注入器から針を安全に取り外し、針に触れることなく容器に収納する。

螺合により注入器に取り付けられた注射針を容器の廃棄口に押し込んで固定保持し、回転させて注入器から針を取り外す。保持された針は、閉止部材に設けた押込み部により容器内に落下させる。

直径の異なる複数タイプのペン型注射器に対応。医療機関だけでなく在宅療養患者の処置にも適する。（イワツキ＝東京都板橋区）

考案功労賞

高周波加熱装置用の加熱コイル＝ティーケーエンジニアリング（高周波開発部副部長・伊藤英昭氏ほか1人）

　冷却ムラを低減し、部品精度を高めるとともに、サイクルタイム短縮により出来高も向上できる焼き入れコイル。コイル寿命を５倍以上に伸ばし、コスト低減にも寄与する。

コイルの誘導加熱有効面を非加熱物より小さくしつつ従来通りの硬化層を確保し、両端に勾配を付けることで、ワーク厚よりコイルを厚くしてもワークを均一かつ広範囲に冷却でき、冷却時間も短縮。コイル内部に２水路設置し、異種金属境界を無くすことで長寿命化した。納入先でギアの歯筋が向上したなどの実績もある。（ティーケーエンジニアリング＝愛知県弥富市）

考案功労賞

貼りにくい場所にも目立たずフィットする絆創膏＝東洋化学（社長・岡幸一氏ほか１人）

　形状と素材、二つの特許で傷も絆創膏そのものも目立ちにくい素肌質感を実現。周囲の視線を気にせず、接客などの仕事やおしゃれを楽しみながら傷の治癒を促進できる。

四辺にくぼみをつけた独自のドローン型形状により、皮膚伸縮による変形に柔軟に追従するようにした。どんな部位でも浮き剥がれにくく、簡単にしわなく貼れる。また、表面粗さの制御と微粒子分散技術で絆創膏の色や質感、透過性、さらにはファンデーションなどの化粧のりの良さも向上。紫外線を９９％以上カットし、傷の色素沈着も抑える。（東洋化学＝滋賀県日野町）

考案功労賞

無機系潜熱蓄熱カプセル＝ヤノ技研（本社／神戸ラボ　代表取締役・矢野直達氏）

　高温条件下でも劣化しにくく、高い耐久性と耐熱性を備えた蓄熱カプセル。温室や家屋、工場などで太陽光や室内暖房の余剰熱を蓄熱し、周囲温度低下時に放熱することで電気や燃料の使用を減らし、二酸化炭素（ＣＯ２）排出量を削減する。

蓄熱材組成物の耐久性と耐熱性を高める核形成材と増粘材の含有材料成分を初めて見いだし、不燃、高蓄熱密度で省スペース、実績１５年以上の高耐久性、安価な原材料、低公害を実現。さらに蓄熱利用効果をより高めるカプセル容器を開発した。量産化技術も確立し、低コスト化した。（ヤノ技研＝兵庫県宝塚市）

考案功労賞

基礎医学研究に有用な実験動物の頭部固定具＝山田雅之氏

　動物実験において磁気共鳴断層撮影装置（ＭＲＩ）などの低侵襲生体画像化法を応用するため、頭部を容易に固定できるようにし、迅速で再現性の高い全身保定を実現した。従来手法では多くの作業と習熟が必要で確実な固定は難しかった。

固定する筒状部のガイド溝と棒状部の突起構造により、特別な工具なしに動物の前後移動や回旋、最適位置での固定までを連続的に誘導する。同一動物での経時的な繰り返し撮像が可能となり、使用動物数を減らせる。麻酔下の不随体動の影響を低減し、高画質画像データを得られる。（愛知県みよし市）

考案功労賞

歩行補助具＝YAMADA（代表取締役・山田好洋氏）

　ゴムの収縮力を筋肉に見立て、足りない筋力を一瞬で補うことで安定した歩行を助ける。歩行訓練のほか、体への負担を減らしてスポーツを楽しめ、健康長寿につながる。

価格は約３万円。既存の歩行補助ロボットなどに比べ、大幅な安価を実現した。電気などの動力は使わないため、災害時も使用できる。約４０秒で簡単に装着でき、階段や坂道で使えるのも魅力だ。

健康な人から加齢やケガなどで歩行に問題を抱える人まで幅広く対応し、フレイル（虚弱）やサルコペニア（筋肉減弱）の低減に貢献する。（ＹＡＭＡＤＡ＝浜松市中央区）