(2024/3/29 10:00)
TOPPANグループは環境配慮型パッケージを起点としたサステナブルブランド「SMARTS™(スマーツ)」を立ち上げた。透明バリア フィルムの「GL BARRIER(ジーエル バリア)」を始め、サステナブルを切り口に同社が強みを持つ製品・サービスを結集。顧客企業のバリューチェーンに沿った最適な選択肢を提供する。同社が目指すのは、デジタル変革(DX)とサステナブル変革(SX)により世界規模で社会課題を解決するリーディングカンパニー。SMARTS™により、その実現を加速する。
「次世代に持続的な地球環境を残したい」―。SMARTS™を主導するTOPPAN(東京都文京区、斉藤昌典社長)生活・産業事業本部SX推進センターの高田康太郎部長はそう話す。
環境課題解決に向けた取り組みが世界的に加速
世界では環境課題解決の取り組みが加速している。各国政府が脱炭素や資源循環に向けた指針や政策を続々と策定。欧州では、2020年に欧州委員会が発表した新循環経済行動計画などを受け、世界の食品・飲料業界の大手メーカーであるスイスのネスレなどが25年を目標に全ての軟包装パッケージをリサイクル可能な素材に切り替えると宣言。日本でも22年に「プラスチック資源循環促進法」が施行されるなど、企業は具体的な取り組みを迫られている。
GL BARRIERで世界市場を席巻
GL BARRIERを使用した軟包装パッケージはTOPPANのSXを代表する製品。アルミ箔に匹敵するバリア性能で食品などの品質を長期間維持し、アルミ箔からの代替が可能に。製造に多くの電力が必要なアルミ箔を使わないことで二酸化炭素(CO2)排出量を削減し「脱炭素」に貢献する。また、パッケージのリサイクルにおいて重要なモノマテリアル化(単一素材化)に向けて、リサイクル性に優れるポリプロピレン(PP)・ポリエチレン(PE)を基材としたGL BARRIERの供給を開始し「資源循環」にも対応。「脱炭素」と「資源循環」の両面で世界市場の席捲を狙う。
SMARTS™でバリューチェーンに最適な選択肢を提供
企業の環境対応はパッケージだけにとどまらない。そこで同社は、環境配慮型パッケージの開発・販売で培った技術やノウハウに、マーケティングやDX、生産受託などの知見を掛け合わせた新ブランド「SMARTS™」を立ち上げた。
SMARTS™は顧客の課題を6つのカテゴリーに分け、多様な製品・サービスを提供する。①市場ニーズを具体化する調査や商品を企画・開発する「スマートプランニング」、②課題の可視化や管理分析をDXで支援する「スマートプラットフォーム」、③環境配慮型パッケージソリューション「スマートパッケージング」、④業務プロセスを最適化する生産受託サービス「スマートプロセスアウトソーシング」、⑤プロモーションなどのコミュニケーション支援「スマートプロモーション」、⑥資源循環を実現する新技術や仕組みを構築する「スマートサーキュラーイノベーション」の6つだ。
パッケージのCO2排出量可視化で脱炭素の一歩目を支える
なかでも特徴的なのは、ライフサイクルアセスメント(LCA)に基づき、パッケージの原材料調達から製造、廃棄・リサイクルまでを通したCO2排出量を容易に算定できるクラウド型システム「SmartLCA―CO2®」だ。同社が1990年代から取り組んでいるパッケージLCA算定ノウハウをもとに、顧客向けソリューションとして開発した。
同システムはパッケージを構成する材質構成や色数、寸法などの仕様情報を入力するだけで、パッケージ製造に関わるCO2排出量 やプラスチック重量を可視化できる。食品メーカーや日用品メーカーなどが脱炭素に取り組むための現状分析を行う。 その後も環境負荷低減に向けたパッケージ提案 、プロモーション、資源を循環させるアプローチと顧客の包括的な課題解決を支援するのがSMARTS™のコンセプトだ。
群馬センター工場で進む無溶剤での軟包装パッケージ技術開発
TOPPANはパッケージ製造における環境配慮にも力を注いでいる。軟包装パッケージのマザー工場である群馬センター工場(群馬県明和町) では、主要な生産工程の印刷とラミネート加工において、無溶剤での軟包装パッケージ製造技術を開発している。高品質な印刷表現や内容物の保護機能は維持しつつ、従来の溶剤使用型の印刷や加工に比べて環境負荷を低減する。
軟包装パッケージの生産で主流のグラビア印刷とドライラミネーションは有機溶剤を使用するため、乾燥に多くのエネルギーが必要である。同社は有機溶剤の使用を抑えた水性フレキソ印刷と、溶剤を使用しないノンソルベントラミネーションを組み合わせた環境配慮のパッケージ生産技術を22年9月に確立した。仕様によっては、従来の油性グラビアインキと油性ラミネーションを使用したパッケージに比べ、パッケージに関わるCO2排出量を約17%削減できる。
高田部長は「SMARTS™は社内外の合言葉のような存在。 例えば海外では、『TOPPAN』の名を知らなくても、『GL BARRIER』の名は知っている、というユーザーの方もいる。顧客企業が環境対応について考える時、『TOPPANに相談する』 ことと同じくらい『SMARTS™で解決できるかも』と想起してもらえるようになりたい」と期待する。
目指すべき北極星(持続可能な社会の実現)は同じ
生活者の意識は変わりつつあるものの、環境配慮の価値を認めてもらうのは容易ではない現状がある。
高田部長は「生活者が商品を手に取る際は『このブランドが好き』『おいしいから買う』といった嗜好性が最初で、その次に環境に配慮した商品かを確認する順番は今後も変わらないと思う。その境目をいかに減らせるか。これは現在の取り組みのその先にあるはずと確信している」 と話す。
「先に変わるべきは企業だと思う。同業の仲間も目指すべき北極星は同じ。業界一丸となって持続可能な社会の実現に向け最終的に生活者に価値が伝わると良い」(同)。
業界内だけでなく 生活者も同じく見上げる北極星となるよう、SMARTS™に期待がかかる。
SMARTS™
https://www.toppan.com/ja/living-industry/packaging/sustainability/
SmartLCA―CO2®
https://solution.toppan.co.jp/packaging/service/smartlca.html
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