(2024/4/26 05:00)
日本経済が歴史的な円安に見舞われている。円安は輸出主導の大手企業の業績を後押しするものの、輸入物価の上昇が経済好循環の実現に水を差しかねない。為替介入も時間稼ぎに過ぎず、投機筋の円売り圧力を抑制するのは難しい。短期的には物価上昇分の価格転嫁を推進し、中長期的には日本の稼ぐ力を引き上げたい。急がば回れの成長投資を着実に実践してほしい。
25日の東京外国為替市場は、節目である1ドル=155円を突破した。約34年ぶりの円安で、日米金利差が投機筋に強く意識されている。中東情勢もリスク回避のドル買いを招いている。
経済界が円安に強い懸念を表明している。経団連の十倉雅和会長は「日本経済の実力を踏まえれば適切でなく、過度な円安と言えよう」、経済同友会の新浪剛史代表幹事も「是正が必要なレベル」と行き過ぎた円安に強い懸念を示す。日本商工会議所の小林健会頭も「コストプッシュ型のインフレが再燃する懸念が非常に強い」と警戒する。企業規模を問わず、最近の円安は受け入れがたい水準にある。
17日に初開催された日米韓財務相会合では、急激な円安による日本の懸念が認識され、為替介入の布石を打ったとも映る。だが介入も効果は一時的とみられる。政府・日銀の意志を市場に伝える意味はあるが、22年9月に24年ぶりに行った円買い・ドル売り介入の効果が数日に過ぎなかったことに留意したい。
日銀の植田和男総裁は、輸入物価の上昇次第では「金融政策の変更もあり得る」と語る。だが政策金利が5%台の米国に対し、日本は0―0・1%。日銀が利上げに動いても日米金利差はなお大きく、米国の利下げ待ちの状況が続くと覚悟したい。
日本は、短期的には輸入物価の上昇分を円滑に価格転嫁し、中小企業の収益を支えることが求められる。中長期的には、稼ぐ力を意味する経常収支の黒字幅の拡大が欠かせない。円の購買力を示す実質実効為替レートは1ドル=360円だった固定相場時代とほぼ同水準だ。成長投資を推進し、“安いニッポン”から抜け出す必要がある。
(2024/4/26 05:00)
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