(2024/6/24 00:00)
地震、台風といった自然災害や事故はいつ発生するか予測がつかない。先行きが不透明なVUCA(変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)の時代と呼ばれる現代において、いかに打たれ強い企業体質・経営体制を構築するかがより一層求められる。コニカミノルタのグループ会社、コニカミノルタジャパンはグループのコア技術を活用し顧客の「みたい」を軸に「新しい価値」を提供することで、SDGs(国連の持続可能な開発目標)実現に直結するソリューションの提案を加速させている。
SDGs 経営に貢献するコニカミノルタの画像IoT
火災の予兆をカメラでキャッチ
コニカミノルタのコア技術の一つに、創業時に手がけていたカメラやフィルムといった画像関連事業を源流とする画像IoTソリューション分野がある。同分野では2016年に買収した独MOBOTIX(モボティクス)のカメラを中心に、映像やAI、各種センサーを連携したソリューションを提供している。中でも、BCP(事業継続計画)対策やレジリエンス強化に貢献できる主力製品としてコニカミノルタジャパンが提案を強化しているのが火災予防ソリューションだ。
熱を検知するサーマルカメラを用いて対象エリアの監視が行え、人の目では分からない急激な温度変化を可視化する。対象物の状態を把握するために同じカメラで可視画像も見ることができ、有事の際に迅速な初動対応につなげられる。検知エリアは最大20カ所まで設置可能。エリア別に警告温度を設定して、警告時は回転灯が点灯するといった注意喚起もできる。最小のシステム構成は閲覧用のパソコンとサーマルカメラ、PoE(イーサネットによる給電)ハブをLANケーブルでつなぐシンプルな形とした。
「火災予防ソリューション」概要
この火災予防ソリューションの特徴を表しているのが、バイオマス発電所での導入だ。
燃料貯蔵庫では燃料内部での微生物による発酵熱と表層部での酸化反応により発火してしまうため、同ソリューションを活用して異常発熱を検知し、自然発火による火災を防ぐのに役立っている。近年は、廃棄物の中に紛れ込んだリチウムイオン電池(LiB)の破砕で火災を引き起こすケースが問題視され、廃棄物処理施設での採用も増えている。このほかにも、セメント製造や工業炉などでの活用事例も出ており、製造業における熱管理のニーズが顕在化してきた。コニカミノルタジャパンICW事業統括部 画像IoTソリューション推進部の松田栄治副部長は「火災予防にサーマルカメラが有効なことはまだ広く知られていないが、直近の事例の広がり方を見ていると、温度上昇を監視するという価値は認めていただいている」と、手応えを示す。
従来の火災検知の課題を解決
サーマルカメラによる火災予防が注目される背景には、従来の火災検知対策ではカバーしきれないという課題がある。工場は高い天井も多く、そこに設置された煙検知器では煙が検知器に届くまでに時間がかかってしまう。据え付けられた換気扇によって煙や熱が流され、感知が遅れる可能性もある。また、常時火気を取り扱う業種ではそもそも検知器の取り付けに適さないといった場合もある。サーマルカメラは物体の温度を面で監視し、異常な熱をいち早く検知・通知するため、こうした課題の解決に有効だ。
さらにコニカミノルタは異常熱の検知が可能なカメラを提供するだけに留まらず、サーマルカメラから取得した測定温度を統合管理できるアプリケーションの開発、販売も展開。
異常熱監視の活用範囲を火災予防対策だけではなく、焼成工程など温度管理が必要な現場での省人化オペレーションが求められる提案にまで広げ、様々な企業・現場への課題提案を推進している。
このように熱管理ニーズ拡大との相乗効果で、火災予防ソリューションは着実に販売数を伸ばしている。21年から本格販売を始め、23年度には22年度比約2倍と好調に推移する。
※サーマルカメラは、消防法に定められた消防用設備ではありません
労働安全支援も展開
今後は製造業でのBCPに貢献するという観点から、火災予防に加えて労働災害に対応したソリューションの提案も推し進める。人手不足が深刻化し、ロボットなどの導入で自動化が進む一方で、“ワンオペ” (1人作業体制)の加速などによる労働災害のリスクが高まっていることを背景に、コニカミノルタジャパンでは今夏、労働安全支援パッケージの発売を予定している。
同パッケージは、コニカミノルタが独自開発した骨格検知人工知能(AI)技術を活用。カメラ映像から人の骨格の傾きや動きを識別し、転倒や特定エリアへの進入、走行を検知する。事故につながるリスクが高い行動を知らせ、事故防止や早期発見につなげる。
コニカミノルタFORXAI事業統括部ソリューション事業推進センタースマートファクトリー事業推進部営業グループの今井利幸グループリーダーは「当社の骨格検知AI技術はカメラで人の姿勢を見て高速、高精度に骨格を検知できる。さらに、転倒などによる姿勢の変化の要素を計算に入れ、検知精度を上げている」と自信を見せる。他社の転倒検知技術は転倒した状態をAIに学習させているものが多く、カメラの位置や背景などによっては検知精度に影響が出ることがあるという。
新しい要素技術も活用して新規ソリューションの創出へ
このほか、AIを活用してカメラで色の変化を検知できるアプリケーションも展開する。現状はパイプからの液漏れや排水の濁り検知といった活用方法を想定しているが、潜在的なニーズを模索中だ。コニカミノルタジャパン画像IoTソリューション推進部では他社との連携も積極的に進め提案のスピードアップを図るといった動きも加速している。色検知など新しい要素技術を活用して新規ソリューションパッケージの創出に取り組んでいる。
エッジAIカメラを活用した色検知アプリ
さまざまなソリューション提案でSDGs経営を支援するコニカミノルタジャパン。顧客の「みたい」を実現することで「新しい価値」を提供し、持続可能な社会の確立に貢献していく。
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