社説/「私的整理」見直し 中小の迅速な事業再構築に期待

(2024/7/11 05:00)

経済産業省は、経営難の企業が迅速に事業再構築できるよう「私的整理」制度の見直しを検討する。債権者全員の同意が必要だった債務の減免を、債権者の多数決で決める制度とする方針だ。早ければ2025年の通常国会に関連法案を提出する。制度の見直しにより、中小企業などによる新分野開拓や業態転換が進み、生産性向上と産業活性化が促されると期待したい。

経産省は、産業構造審議会に新たな有識者会議「事業再構築小委員会」を設置し、6月末から私的整理をめぐる議論に着手した。政府が22年に閣議決定した「新しい資本主義」実行計画には、経営者の退任を問わずに私的整理を推進する考えが示されていた。経産省は法制の具体化に向け、議論を本格化する。

私的整理は、裁判所による法的手続きを経ずに、債権者と債務者の交渉により債務を減免する制度。日本では債権者全員の同意が必要であり、早期かつ迅速な事業再構築を行いづらかった。欧州には多数決により債権者の権利を変更できる制度がある。欧州の事例も参考にして、時間をかけずに手続きを終える制度に改善してもらいたい。

私的整理の手続きは、中小企業などの債務者が事業再生計画を策定し、債権者が同計画を決議。その上で債務者が裁判所に計画の認可を申請することが想定される。一連の手続きは、弁護士や会計士らの第三者機関が監督するため、中小企業の延命につながるようなモラルハザード(倫理観の欠如)を招かずに私的整理が進むと期待したい。

減免する債務の範囲など、課題も少なくない。金融機関の債務に限定するのか、有識者会議の議論の行方を注視したい。

経産省の資料によると、日本企業の債務残高はコロナ禍前から110兆円以上も増え、中小企業の3割が債務の過剰感を訴えている。原材料高や人手不足で倒産が増える中、中小企業も脱炭素やデジタル化といった急速な環境変化に対応する必要がある。資金調達コストが引き上がる「金利のある世界」が本格的に到来する前に、私的整理を円滑に行える環境を整えたい。

(2024/7/11 05:00)

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