VR研究に思想通じる『飛行機設計論』 東京大学名誉教授・広瀬通孝氏に聞く

(2024/7/12 12:00)

中学生の時に山名正夫、中口博著『飛行機設計論』を自分で購入した。当時は漠然と鉄道や飛行機、ロケットといった“機械モノ”がすべて好きだった。購読していた『内燃機関』という雑誌にこの本のことが書いてあり、手持ちのお金をほどんど使って買った。今となるとなぜ買ったのか思い出せないが、大学生が読むような専門書であり、飛行機の設計論や設計思想などが詳細に記されていた。

当然、書いてある内容は全然理解できなかったのが、その中で最初の方に書かれていた設計論についての記述はよく覚えている。「三角翼」や「全翼」「後退翼」など、飛行機が飛ぶための全体の形を思い浮かべることは設計者の役割であり、何か連立方程式を解くようにできあがっていくわけではなく、個人の中から湧き上がるものだというようなことが記してあった。

細かい理屈は後付けであり、最初に全形のようなものがある。私は仮想現実(VR)で今に至るまでいろいろやってきたが、その推進力はそういう考えだったと思う。

最近読んだ本の中では、高橋団吉著『新幹線を走らせた男』に感動した。第4代の国鉄総裁で新幹線計画を推進した十河(そごう)信二氏の伝記だ。新幹線計画では鉄道技術者の島秀雄氏が有名で、私も若いころは技術的な観点から見ていた。同書はもう少し外枠の話が書いてあり、資金をいかに調達してきたのかや、政治家との激しい駆け引きなど、新幹線はどうやって開業することができたのかを丹念に掘り起こしている。

考えてみると日本でなかなかビッグプロジェクトが成功しない中、新幹線はうまくいったものの一つだ。規模的には全く比較にならないが、私も研究プロジェクトをうまく進めるとかモノを作るとかしているので、大変参考になる。

十河氏が国鉄総裁になったのは71歳の時だ。今の私と同じくらいの年齢で、大集団のトップに立って大きな仕事を成し遂げているのは本当にすごい。

(2024/7/12 12:00)

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