ロート製薬、AI活用し工場スマート化 工場データ サイバー空間で解析

(2024/7/29 12:00)

ロート製薬は人工知能(AI)を用いてスマート工場化への取り組みを進めている。マザー工場である上野テクノセンター(三重県伊賀市)で、AIやIoT(モノのインターネット)技術を駆使して、サイバーフィジカルシステム(CPS)を構築。搬送、物流を最適化し生産性を高める一方、工場で働く人の安全、健康にも配慮する。

上野テクノセンターに新たにC棟を建設するに当たり、生産技術系の社員によるプロジェクトを2019年に発足。同センターで働く社員に「どんな工場にしたいか」をヒアリングした結果、導き出したテーマが「人と環境にやさしいスマート工場」。九州大学マス・フォア・インダストリ研究所の藤澤克樹教授(現東京工業大学教授)、ファーストループテクノロジー(東京都中野区)の協力を得て、CPSを実装するスマート工場を目指した。

CPSの実装では、センサーを張り巡らせてデータを収集、工場全体をI・IoT(製造業におけるモノのインターネット)化した。従来は各工程で人が記録していたデータを自動収集し、人や機器、部材などの移動や作業負荷の情報をサイバー空間で解析。AI活用で最適化を図る。

22年に稼働し医薬や医薬部外品など42品目を製造するC棟では、品目数、生産数量が増え続けている。品質要求も年々厳しくなっており、それだけに生産最適化が大きなメリットをもたらした。

  • 医薬や医薬部外品など42品目を製造する上野テクノセンターC棟

その象徴的な事例となっているのが自動倉庫の夜間棚替えシステム。翌日の生産スケジュールに合わせ、自動倉庫内の原材料を夜間に移動しておき、すぐに出庫できるようにした。固城浩幸生産技術部副部長は「日中の自動倉庫の移動距離を5―6割削減できた」と効果を説明する。夜間棚替えシステムは既存のA棟、B棟にも展開を進めている。

CPSは材料、製品の工場内搬送や工場間配送などサプライチェーン(供給網)全体への展開を目指している。現在は適用範囲を広げるとともに、CPSによる工場運営に破綻が起きていないかを調べるためのシミュレーターとして、「コンピューター上に工場をつくるデジタルツイン環境を構築している」(固城副部長)。

CPSの展開で、日本全体の労働力減少、環境負荷低減などの複合的な課題に対応しながら生産性を高める。工場で働く人やサプライチェーンに関わる人、製品・サービスを利用する人、それぞれのウェルビーイング(心身の幸福)向上につなげる。

(2024/7/29 12:00)

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