(2024/7/29 12:00)
物質・材料研究機構(物材機構)は蛍光体の研究をロボットで効率化している。ロボットを実験操作に導入し、研究効率を従来比で約10倍に高めた。蛍光体は外部の光エネルギーを吸収し別の光として出す物質で、白色発光ダイオード(LED)などさまざまな場所で活躍する。同領域の責任者で機器の導入も担当した武田隆史主席研究員は「自動化機器で研究をより加速させる」と自信を見せる。
ロボットは蛍光体の結晶構造解析で使う。研究では試料となる蛍光体を作り、構造や性質を調べながら新しい蛍光体を見つける。扱うのは数十マイクロメートル(マイクロは100万分の1)ほどの粒子。ロボットは蛍光体の性質の肝になる粒子の結晶構造の解析に使う画像データ収集を高速化する。エックス線(X線)を粒子に照射し、X線の回折位置と強度のデータから蛍光体の構造を見る。
特にX線の集光位置に微小な粒子を当てる位置調整と試料交換の自動化がポイント。従来は微妙な位置の調整を人が担当し、蛍光体1粒の測定に4時間ほどかかっていた。ロボット導入後は1粒当たり1時間ほどで測定できるほか、夜間も無人で研究を進められる。
ロボットによる測定の前段階では、試作した蛍光体粒子の大きさや発光スペクトルを1粒ずつ判別する自動粒子分光装置も活躍する。両機器は2021年に導入した。19年に物材機構の首脳陣の間で蛍光体研究の自動化装置の話題が挙がり、20年に機器の導入が決定した。必要要件を同機構が公開し、入札を経て導入した。
蛍光体はケイ素やアルミニウムなどを含む化合物に、発光源のユウロピウムなどを添加したもの。構成元素や割合のほか、結晶構造や発光源の位置で蛍光体の発光特性が変わるため、多くの試料の分析が必要だ。
現在はLEDがより鮮やかな色を発光できる蛍光体や、より多くの情報を出すセンシング用の蛍光体を開発中。武田主席研究員は「新たな蛍光体の発見で社会を変えたい」と目を輝かせる。
(2024/7/29 12:00)
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